一級建築士製図試験の今年の課題が発表されました。
エスキスを進めるときに、いつも悩むところが「コアの配置」
その位置を間違えると「動線ライン」はガチャガチャになり、プランに苦労しますよね?
何をするにも「コアが邪魔になる」、修正しようにも「コアが邪魔になる」
製図ブログでは「図書館」における「コア位置と動線ラインの関係」を3パタン紹介します。
どの課題でも比較的よく使えるパタンを習得して、エスキスの効率化を図りましょう。
2面道路を克服する
「立体パズル」
「チビコマ」解説
こんな人におすすめ!
- コアの位置が決まらない。
- 大きなボリュームが収まらない。
- 動線やゾーニングが決まらない。
悪夢のスパイラル
- コアが邪魔で部屋が入らない。
- コアを移動すると、他のフロアのコアも移動する。
- 移動先のフロアでもプランに支障が生じる。
- プランの修正を試みるが、またコアが邪魔になる。
- コアを移動ながらプランの修正を繰り返し、またコアが邪魔になる。
カチャカチャ・・・
立体パズルが解けないよ。
苦しい・・苦しい・・
コア・ノイローゼになりそう。
プランニングを進めるなかで、このようなルーティーンに陥ってはいませんか?
「コアが先か?」「部屋が先か?」といった、鶏か卵みたいな疑問をここで解消します。
製図ブログでは「図書館」における「コア位置と動線ラインの関係」を3パタン紹介しましょう。
誰が考えたんだ!?
こんなプランが使えるか!
いや、おまえだよ!
製図ブログについて
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
一級建築士製図ブログ:コアと動線ラインの3つのパタンを紹介!
まず始めに、コア位置の考え方には基本と応用の「2つのセオリー」があります。
その違いをお伝えしたうえで、応用となる「図書館」のコアパタンを紹介しましょう。
2つのセオリー
- 基本:単一用途の考え方
- 応用:設計課題「図書館」の特徴を踏まえた考え方
2つのセオリーですが、
根本的な考え方は同じです。
コア位置の決め方について
単一用途のケース
単一用途の例です。
一級建築士|エスキスがまとまらない受験生に贈る、(コアの位置)
さっそくですが、コア位置を決めるための3つのポイントをまとめました。
コア位置の決めるポイント!
- 出入口を起点に動線ラインを引く。
- 1階の動線ラインと2階の動線ラインを交差させる。
- 動線ラインに”ぶら下がる”ようにメインコアを配置する。
動線ラインの位置は、大きなボリュームが道路側に向くか、反対側に向くかによって異なる。
奥にボリュームを置く場合
コア位置は動線ラインの手まえ
手まえにボリュームを置く場合
コア位置は動線ラインの奥
「図書館」のケース
2面道路の戦略について
ゾーニングや動線を考えるに当たって「2面道路」は難しい敷地条件です。
(片面道路や対面道路に至っては比較的シンプルにまとまりやすい)
ここでは「2面道路」をメインとして、コア位置と動線ラインの決め方をお伝えします。
コア位置と動線ライン
- 「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む。
- 大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く。
- コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる。
2面道路の敷地条件をベースに「交差点を起点にした」コアの位置を先に示します。
その際には「大きなボリュームの入る位置」を見越したうえで、動線ラインを想定すること。
ポイントを押さえたうえで、平面検討ツール「チビコマ」を使って3つのパタンを紹介しましょう。
チビコマ検討では「立体構成」を主に伝えるため、トイレなどの収まりは考慮していません。
1/400図のプランニングをする際には、動線ラインに沿わせるなど工夫して対処しましょう。
パタン1:シンプルプラン
要求される条件(例)
- 吹抜け(1コマ)
- カフェ(2コマ)
- 共用部(8コマ)
- 第3部門(4コマ)
- 管理部門(8コマ)
- 屋上テラス(4コマ)
- 一般開架閲覧室(12コマ)
- その他の諸室(4コマ+8コマ)
1.「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む
6コマ×4コマ
スパン割りは、最もオードソックスな「6コマ×4コマ」のチビコマで進めていきます。
横断歩道の位置は必ずチェックしましょう!
駐車場の位置は横断歩道から5m以上離すこと。(道路交通法)
その関係から、メインアプローチは建物の中心より、少し「横断歩道側」へ寄ります。
「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込みます。
コアの位置関係は「横断歩道を起点」にして、アプローチと一緒に押さえておきましょう。
吹抜けの位置は風除室の真上、かつ利用者コアの隣りが典型的なパタン。
面積の扱いなど考える余地はありますが、多数派のプランになる傾向が強いので大丈夫です。
(そういったところでは、あまり差が付きにくいはず。)
2.大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く
大きなボリュームは、出来るだけ公園側(南)⇩に向けたいですよね?
そこを見越したうえで、2階3階の動線ラインは公園側から Y方向⇧に3スパン後退させます。
公園側(南)⇩に大きなボリューム、例えば図書部門とサービス部門のセットが入るとします。
サービス動線を確保する点から、この2つは切り離せない「ひとつの大きなボリューム」として扱いましょう。
平面の端っこに共用部の部屋(8コマ)をタテ向きに入れます。
タテ向きに入れることで、外部からの直接アプローチ要件も満たすことが出来ますよね?
残りのスペースにカフェ(2コマ)と第3部門(4コマ)が入ります。
サービス部門が公園側(南)⇩に向いても間口の半分(3コマ分)以下であれば、プランに差し支えはありませ
ん。
3.コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる
収めたボリュームに沿って、「2つのコアの間を通す」ように動線ラインを引きましょう。
動線ラインにより、残りのスペース(公園側(南)⇩を想定)も見えて来るはずです。
2階の一等地に一般開架閲覧室(12コマ)を置きましょう。
管理コアまで部屋を伸ばすことで、サービス動線も確保できますよね?
例えば3階に、一般開架閲覧室の上部に「大きな吹抜け」(4コマ)が要求されるケース。
動線ラインと部屋の配置も考えたうえで、「邪魔にならない」位置に検討しましょう。
要求される「屋上テラス」(4コマ)についても考え方は同じです。
動線ラインと図書部門の部屋(8コマ+4コマ)との繋がりを確保できる配置としましょう。
(共用部から屋上テラスに直接出入りできる計画にするのが望ましい。)
コア位置と動線ライン
- 「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む。
- 大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く。
- コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる。
パタン2:道路側採光プラン
要求される条件(例)
- 吹抜け(1コマ)
- カフェ(4コマ)
- 共用部(8コマ)
- 第3部門(2コマ)
- 管理部門(8コマ)
- 屋上テラス(4コマ)
- 一般開架閲覧室(12コマ)
- その他の諸室(4コマ+8コマ)
1.「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む
横断歩道の位置と周辺環境は、必ずチェックしましょう!
パタン2では、「道路側採光」を優先した平面構成を計画します。
駐車場の位置は横断歩道から5m以上離すこと。(道路交通法)
その関係から、メインアプローチは建物の中心より、少し「横断歩道側」へ寄ります。
「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込みます。
コアの位置関係は「横断歩道を起点」にして、アプローチと一緒に押さえておきましょう。
吹抜けの位置は風除室の上ではなく、エントランスホールを突っ切った先の「奥」がベストです。
利用者コアの隣りに置けないからといって平面の真ん中に吹抜けが来ると、プランが苦しくなります。
2.大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く
大きなボリュームは、出来るだけ道路側(北)⇧に向けたいですよね?
そこを見越したうえで、2階3階の動線ラインは道路側から Y方向に⇩3スパン後退させます。
「エントランスホールを奥まで突っ切る?」
そのスペースが取れない場合は、スパンの幅を縮めて「部屋を置く部分のスペース」を広げましょう。
平面の端っこに共用部の部屋(8コマ)をタテ向きに入れます。
タテ向きに入れることで、外部からの直接アプローチ要件も満たすことが出来ますよね?
残りのスペースにカフェ(4コマ)と第3部門(2コマ)が入ります。
「交差点に面してカフェを配置することで、集客性に配慮した」といったところでしょうか?
3.コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる
収めたボリュームに沿って、「2つのコアの間を通す」ように動線ラインを引きましょう。
動線ラインにより、残りのスペース(道路側(北)⇧を想定)も見えて来るはずです。
2階の一等地に一般開架閲覧室(12コマ)を置きましょう。
管理コアまで部屋を伸ばすことで、サービス動線も確保できますよね?
「屋上テラス」(4コマ)は「邪魔にならない」角の場所に置きましょう。
動線ラインからも図書部門の部屋(8コマ+4コマ)にアクセス出来ますよね?
(共用部から屋上テラスに直接出入りできる計画にするのが望ましい。)
共用部門の上部に大きな吹抜けが要求される場合
仮に大きな吹抜け(4コマ)が要求された場合も、考え方は同じです。
動線ラインと他のスペースの収まりを考え、「邪魔にならない」位置に設けましょう。
このケースの場合、一般開架閲覧室(12コマ)は3階に置くことも選択肢のひとつ。
南側に住宅地があったとしても、大きなボリュームを道路側に向けることで自然採光も確保できますよね?
コア位置と動線ライン
- 「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む。
- 大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く。
- コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる。
パタン3:コア片寄せプラン
要求される条件(例)
- 吹抜け(1コマ)
- 共用部(8コマ)
- ラウンジ(1コマ)
- 第3部門(4コマ)
- 管理部門(8コマ)
- 屋上テラス(4コマ)
- 一般開架閲覧室(14コマ)
- その他の諸室(6コマ+6コマ)
1.「特大ボリュームを収める」コアの位置を落とし込む。
「大きなボリューム」が集中して要求されるケースもありますね?
その場合の、利用者コアを3スパンずらして「管理コアに寄せる」という対処法を紹介します。
このときに注意するべきことは、避難経路の「重複区間オーバー」です。
平面の端から3スパン中寄せすることで、重複オーバーのリスクが高まります。
7mスパンを想定して、重複区間を試算してみましょう。
- 7m×3スパン=21m
- 21m×√2≒29.7m
- 29.7m<30.0m(ギリギリセーフ)
このパタンでは、重複オーバーを回避するための対処法も合わせて紹介します。
利用者の出入口の位置に注目してください。
「大きなボリューム」が入ることを見越して、利用者コアの位置と一緒に端にずれることになります。
「特大ボリュームの要求室に対応する」コアの位置を落とし込みます。
コアの位置関係は「横断歩道を起点」にして、アプローチと一緒に押さえておきましょう。
注意点!
利用者コアと管理コアのY方向の位置ずれは、「3スパン」までにして下さい。
離しすぎると互いのコアを結ぶ廊下が長くなり、部屋を置けるスペースが少なくなってしまいます。
平面の端っこに共用部の部屋(8コマ)をタテ向きに入れます。
大きなボリュームを奥側に入れることで、動線もコンパクトになりますよね?
2.大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く
「集中する大きなボリューム」は、東側(右)⇨に収める想定です。
そこを見越したうえで、2階3階の動線ラインは西側(左)⇦に寄ることになります。
吹抜けの位置は風除室の真上、かつ利用者コアの隣りが典型的なパタン。
「集中する大きなボリューム」は、東側(右)に収める想定なので、そちらには吹抜けは入れません。
【ケース①】
残りのスペースにカフェ(2コマ)と管理部門(8コマ)が入ります。
設備機械室などの大きな諸室は真ん中あたりに配置して、へりあきから出入りさせるしかありません。
【ケース②】
残りのスペースに管理部門(3コマ)と第3部門(4コマ)が入ります。
設備部門(2コマ)がある場合は、場所に拘らず「余りのスペース」に置きましょう。
3.コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる
収めたボリュームに沿って、「2つのコアの間を通す」ように動線ラインを引きましょう。
動線ラインにより、残りのスペース(東側と南側を想定)も見えて来るはずです。
残しておいたスペースに、一般開架閲覧室(14コマ)を置きます。
管理コアまで部屋を伸ばすことで、サービス動線も確保できますよね?
重複区間オーバーの対策として、避難ルートを分岐させましょう。
サービス動線と利用者動線の2つの経路を確保することで、重複区間オーバーを回避できます。
3階においては、重複区間オーバーを避けるために要求されていた「屋上テラス」を使います。
「2つのコアから最も遠い位置」に屋上テラス(4コマ)を置きましょう。
残りのスペースには、図書部門の大きなボリューム(6コマ+6コマ)が入ります。
利用者コアを3スパン寄せたことで、こちらもスッキリと収まりますよね?
「2つのコアから最も遠い位置」は、すでに屋上テラス(4コマ)で解消済み。
そうすることで、避難距離が短くなり重複区間オーバーを回避することが可能となります。
こんなときは?
- 屋上テラスが要求されていない。
- 屋根をつくるスペースの余裕がない。
この場合は、「2つのコアから最も遠い位置」に「一番大きなボリューム」を置きましょう。
そうすることで、避難距離を斜めにショートカットして重複区間を短くすることができるはずです。
コア位置と動線ライン
- 「特大ボリュームを収める」コアの位置を落とし込む。
- 大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く。
- コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる。
チビコマ検討では全体構成を主に伝えるため、トイレなどの収まりは考慮していません。
1/400図のプランニングをする際には、動線ラインに沿わせるなど工夫して対処しましょう。
一級建築士製図ブログ:コアと動線ラインの3つのパタンを紹介(まとめ)
コア位置の決めるポイント!
- 出入口を起点に動線ラインを引く。
- 1階の動線ラインと2階の動線ラインを交差させる。
- 動線ラインに”ぶら下がる”ようにメインコアを配置する。
動線ラインの位置は、大きなボリュームが道路側に向くか、反対側に向くかによって異なる。
奥にボリュームを置く場合
コア位置は動線ラインの手まえ
手まえにボリュームを置く場合
コア位置は動線ラインの奥
注目するのはコアだけ?
コアの位置は、アプローチの経路と一緒に押さえておきましょう。
パタン1:シンプルプラン
隣地が公園に面する敷地
コアの位置(候補)
動線ライン
立体構成イメージ
パタン2:道路側採光プラン
隣地が住宅に面する敷地
コアの位置(候補)
動線ライン
立体構成イメージ
パタン3:コア片寄せプラン
大きな図書室が要求される場合
コアの位置(候補)
動線ライン
立体構成イメージ
コア位置と動線ライン
- 「交差点を起点にした」コアの位置を落とし込む。
- 大きなボリュームの位置を見越したうえで、動線ラインを引く。
- コア位置と動線ラインに沿って、建物の立体構成を組み立てる。
いっぷく
休憩タイム。
この記事では、「図書館」の特性を考慮した3パタンを紹介してきました。
2面道路は外部アプローチと内部動線、そしてコアの位置が複雑に関わり合う「難しい条件」です。
それに対して片面道路や対面道路では、動線ラインの通る部分が限られるため、それほどコアの位置は難しくなりません。
しかし、2面道路においても「交差点」を起点としたコアの位置関係には法則があります。
その位置関係を覚えておくことで、接道条件が東西南北に反転したり回転したとしても、交差点を起点に対応できるでしょう。
2面道路は実に奥が深い。
鶏が先か?卵が先か?
コアが先か?部屋が先か?
「コアが先か?」「部屋が先か?」といった、鶏か卵みたいな疑問が残ってますよね?
図書館の場合、コアの位置は要求される「吹抜け、無柱空間、屋上テラス、図書室」のボリュームによって、左右されるところ。
そのボリュームを「何処に置くか?」を想定したうえで、コアの位置を「仮決め」しましょう。
コアの位置は「要求されるボリューム」によって、動線ラインに沿わせながら「調整を図る」のです。
建物は全体のバランスが大切、
色々な角度から見ていこう。
コア対策はバッチシ!
最後のまとめ(実践編)
- 「交差点を起点にした」コアの位置を「仮決め」する。
- 大きなボリューム落とし込み、コアを結ぶように動線ラインを引く。
- ボリュームの大きさに応じて、各階のバランスを見ながらコアの位置を調整する。
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
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