一級建築士製図試験、どのような設計課題においても空調設備は切り離せないもの。
単一ダクトとは、「快適な室内環境を保つための代表的な空調システム」のひとつです。
しかし、この方式は構造上「エスキスの障害となる要素」として様々な所に関わってきます。
空調で「単一ダクト方式」が指定されると、その作業はいつも以上に慌ただしくなることでしょう。
この製図ブログでは単一ダクトの基本原理と特徴から、エスキスへの応用まで詳しく解説していきます。
中央熱源方式
熱と空気の流れ
エスキスへの応用
こんな人におすすめ!
- 空調の基本的な原理が分からない。
- 単一ダクトの指定によりエスキスがつまずく。
- 単一ダクトから「エスキスに応用する方法」を知りたい。
ああ、快適~♬
心地いい風だな (^ ^)♪。
製図ブログについて
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
一級建築士製図ブログ:空調方式の基本原理
単一ダクトとは何か?
ところで、この空調方式について受験生の方はどれほど理解できていますでしょうか?
「送風口から吹き出す”空気の温度や風量”を調節することで、室内の温熱環境をコントロールする」
初っ端から
堅苦しいこと言わない!
ひとことで言いますと単一ダクトとは、「全館空調」と呼ばれるもの。
建物の内部を全体的に空調することで、温度を均一に保つことの出来るシステムです。
美術館や百貨店の売場などでは、広い空間を快適にできる空調方式としてよく採用されています。
中央熱源方式と個別分散熱源方式
Step1:★☆☆☆☆
熱源方式は大きく分けて「中央熱源方式」と「個別分散熱源方式」に分類されます。
まず始めに、この2つの構成から大枠を捉えていきましょう。
よく分かっていない。
そこから教えてくれる?
2つの空調方式
- 中央熱源:建物全体の空調を主に1台の空調機でまかなう。
- 個別熱源:部屋ごとに熱源機を設けて、建物のある空間だけを空調する。
一文で短くまとめると、このような大別になります。
それでは「中央熱源方式」と「個別分散熱源方式」のそれぞれの区分けについて展開しましょう。
テンポ早くない?
もう少し涼みたい・・・
空調方式の分類について
- 「中央熱源方式」
- 熱源機:空冷ヒートポンプチラーユニット
- 単一ダクト方式
- ファンコイルユニット方式
- 熱源機:空冷ヒートポンプチラーユニット
- 「個別分散熱源方式」
- 熱源機:空冷ヒートポンプパッケージユニット
- 空冷ヒートポンプパッケージ方式
- 天井カセット
- 天井隠ぺい型
- 床置き型(直吹き)
- 床置き型(ダクト接続)
- 空冷ヒートポンプパッケージ方式
- 熱源機:空冷ヒートポンプパッケージユニット
空調方式の区分けを
しっかり整理しておこう。
空調方式の特徴について
- 「中央熱源方式」
- 単一ダクト:安定した全館空調を行う。
- 単一ダクト+天井カセット:部屋ごとに空調する。
- ファンコイルユニット+外調機:内部の空気清浄度を高める。
- 「個別分散熱源方式」
- 空冷ヒートポンプパッケージ方式
- 天井カセット:部屋ごとに空調する。
- 天井隠ぺい型:吹抜けまわりを空調する。
- 床置き型(直吹き):窓際の空調をする。
- 床置き型(ダクト接続):大空間を空調する。
- 空冷ヒートポンプパッケージ方式
吹出しタイプの用途も
ここで押さえておこう!
床置き型(ダクト接続)とは?
ここで登場する「ダクト接続」とは?という方に向けて説明しましょう。
勘違いしやすいところ
個別分散熱源方式の床置き型(ダクト接続)というのは、単一ダクトではありません。
大空間に採用される「局所的な空調」の位置づけになるため、混同しないようにしましょう。
床置き型は、主に「コールドドラフト」対策が必要な部分に採用されます。
床置き型と天井隠ぺい型は
ドラフト対策に使われます。
コールドドラフトとその対策について
Step2:★★☆☆☆
コールドドラフトとは?
コールドドラフトとは?
- 暖かい空気は軽くなり、上昇して天井へ向かう。
- 冷たい空気は重くなり、下降して床面に留まる。
- 天井部と床面の温度にムラが生じることで、不快感を与える。
何だか底冷えがして
頭がぼーっとするねえ。
コールドドラフト対策
- 吹出し口を居住域に近い位置に取りつける。
- 吹出し能力の高いノズル型、スロット型などを取りつける。
- 専用の空調機とダクトスペースを設置して、天井~床面の気流をつくる。
吹出しタイプのドラフト対策
- 天井隠ぺい型:吹抜けまわりから、居住域に向けて吹き出す。
- 床置き型(直吹き):窓際のペリメーターゾーンの空調をする。
- 床置き型(ダクト接続):大空間のコールドドラフトを解消する。
コールドドラフト対策は主に
ペリメーターゾーンに使用される。
大空間におけるドラフト対策
空気をかき回して
温度と湿度を均一にする。
建物内は、全館空調だけでは万能とはいえません。
ペリメーターゾーンに対してはドラフト対策が必要です。
天井部から快適な空気を吹き出し、床面から空気を回収する。
そうすることで、「居住域」には常に快適な空気を届けることが出来るのです。
居住域に
快適な空気を届けるのだ!
空調方式の特徴と採用する理由について
Step3:★★★☆☆
空調方式を採用するには、その特徴を踏まえたうえで「理由」を問われます。
計画の要点においても、採用した理由について文章で解答を要求されるところ。
その対策として、特徴を知ることからしっかりと押さえておきましょう。
それを選んだ理由は?
100文字以内で答えて。
中央熱源方式を採用する理由
中央熱源方式
- 建物内の温度コントロールと換気を同時に行える。
- 熱源機の出力が大きく、建物全体の空調を1台でまかなえる。
- 熱源機を1ヵ所に集約して設置できるため、メンテナンスがしやすい。
ここは押さえる!
中央熱源方式のもっとも押さえるべき特徴は「換気ができる」こと。
他の方式とは異なり、「新鮮空気を常に供給できる」というメリットがあります。
単一ダクトでは「空調機」、ファンコイルユニットでは「外調機」がその役割を果たすのです。
ああ~快適だね♬
いつでも換気は素晴らしい。
個別分散熱源方式を採用する理由
個別分散熱源方式
- 熱源を各室やエリアごとに設けることから、個別制御ができる。
- 利用時間に応じて「室のみ・エリアのみ」を対象とした運転が可能なので省エネになる。
- 1台がクラッシュしても他の空調機は稼働できるので、建物全体への影響が小さくなる。
換気はどうなる?
個別分散熱源方式には、換気機能がありません。
それを補うために「全熱交換器」と呼ばれる換気設備が必要になってきます。
全熱交換機についてはこちら
クリックすると開きます。
全熱交換器の役割と原理について
全熱交換器とは?
天井カセットエアコンは室内の温度調整を図るもので、換気機能はありません。
室内の空気を”かき回している”だけなので「全熱交換器」と呼ばれる換気設備によって、空気の出し入れをします。
(全熱交換器は空冷ヒートポンプパッケージ方式で採用される換気設備です。)
夏場の換気
冬場の換気
- 新鮮な外気を室内へ取り込む。
- 室内の空気を屋外へ吐き出す。
- 空気のみを出し入れさせて、室内の温度は外に逃がさない。
空気のみを循環させて
快適な温度は室内に留める。
空調方式のまとめ
【中央熱源方式】
熱源機を1カ所に集約して、建物全体の空調の一元管理ができる。
【個別分散熱源方式】
熱源機を区分ごとに分散させて、各階あるいはエリアごとに空調する。
私たちが快適に暮らせるのは
空調設備のおかけです。
一級建築士製図ブログ:単一ダクトのシステム構成
Step4:★★★★☆
- 屋上に設置する熱源機
- (空冷ヒートポンプチラーユニット)
- 空調機械室に設置する空調機
- (エアハンドリングユニット)
- 熱源機から空調機に向けて、熱を送るためのパイプスペース
- 空調機から各部屋に向けて、空気を送るためのダクトスペース
まず始めに、単一ダクトのシステム構成を説明していきます。
熱や空気の流れと照らし合わせながら、ひとつずつ順を追って押さえていきましょう。
空調のシステム構成!?
難しい話は受け付けませんよ。
全館空調における空気の流れ
- 熱源機で冷水や温水をつくる。
- PS(給排水との兼用可)を通して冷媒を送る。
- 空調機へ冷媒を送り込み、外から導入した空気と熱交換する。
冷媒との熱交換によって
冷気や暖気がつくられる。
- 外気を空調機へ取り入れる。
- ダクトスペースから新鮮な空気を送り込む。
- 各部屋の室内機、又は吹出し口から快適な空気を供給する。
給気
- 給気:新鮮な外気を室内へ取り込む。
- 還気:室内の空気を外部へ排出する。
- 室内の不快な空気を吸い込む。
- ダクトスペースから不快な空気を送り返す。
- 空調機から不快な空気を外へ吐き出す。
還気
- 給気:新鮮な外気を室内へ取り込む。
- 還気:室内の空気を外部へ排出する。
新鮮な空気を運ぶ仕事は
単一ダクトにお任せ下さい。
大空間における、SAとRAの系統図
ここからは大空間における「ドラフト対策」となる空調システムの話です。
天井高の高い空間は、天井カセットでは気流が下まで到達せず「ショートサーキット」に陥ります。
計画の要点では、その改善方法として「吹出し口の設置や気流の流れを示す」イメージ図が要求されるケースもあるので、こちらも押さえておきましょう。
え!?まだ話は続くの?
もうお腹一杯なんだけど。
大空間における空調システム
- 外気を空調機へ取り入れる。
- ダクトスペースから新鮮な空気を送り込む。
- 大空間の天井面から快適な空気を供給する。
- スロット型の吹出し口より「居住域」まで気流を届ける。
給気
- SA:サービスエアー(吹き出し口)
- RA:リターンエアー(空気の帰り道)
スロット型は出力が大きく、
下まで空気を到達させられる。
- 壁面の低い位置から空気を吸い込む。
- RADSから天井裏のダクトへ空気を戻す。
- ダクトスペースから空気を送り返す。
- 空調機から不快な空気を外へ吐き出す。
還気
- SA:サービスエアー(吹き出し口)
- RA:リターンエアー(空気の帰り道)
上から吹き出し、下から戻す。
ショートサーキットの改善策です。
全館空調における空気の流れ(まとめ)
まとめ
- 空調機に外気を導入する。
- 熱源機からの熱を冷媒を通して空調機に送る。
- 外気と冷媒の熱交換によって温風や冷風をつくる。
- 空調機の動力でダクトを通して各室に空気を送る。
- 室内の不快な空気を空調機に戻し、外へ吐き出す。
熱交換の原理について(補足)
ここで登場してきた「熱交換」の原理について簡単に説明します。
ひと言でいいますと、外気と冷媒の接触により「熱の受け渡し」をする仕組みです。
熱交換とは?
外気と冷媒を「接触させる」ことによって「吸熱作用・放熱作用」を促進させること。
「熱交換」・・・
何のトレードだろう?
熱交換の原理
- 熱交換器に冷水(冷媒)を送り込む。
- 導入した外気(暖)と冷水を熱交換器で接触させる。
- 冷水(冷媒)からの吸熱作用によって、空気(暖)を冷却する。
なるほどね。
熱交換の謎がとけた!
一級建築士製図ブログ:単一ダクトとエスキスへの応用
空調方式と単一ダクトの基本知識についてお伝えしてきました。
しかし、知識を習得してもエスキスに転換できなければ合格には届きません。
ここからは、この記事の真骨頂となる「エスキスへの応用」のテーマに移っていきます。
待ってました!
勝負はここからだぞ!
単一ダクトとエスキスの擦り合わせ
単一ダクト方式が要求されるケース
平成24年度:小ホールの空調設備は単一ダクト方式とする。
室面積が広くて天井の高い内部空間においては、単一ダクトは効果的な空調方式といえるでしょう。
しかし、受験生がこの空調方式を採用する「最大のデメリット」となるもの。
それは「エスキスに制約が生じる」ということです。
エスキスに与える
影響とは?何だろうね。
単一ダクトのエスキスの押さえどころ
エスキスへの応用編
・単一ダクトのシステム構成を理解しておく。
・単一ダクトのエスキスへ影響するポイントを洗い出す。
・必要なポイントを見据えたうえで、エスキスの工程に折り込む。
押さえるべきポイント
- 屋上設備スペース
- ドライエリア
- 空調機械室
- ダクトスペース
- 天井のふところ
エスキスに影響するもの
- 高さ制限
- 配置計画
- 平面計画
- スパン割り
- 階段の計画
「単一ダクト方式の採用によりエスキスにどう影響するのか?」
製図試験対策として、この視点をしっかりと掘り下げていきましょう。
単一ダクトを理解して
エスキスにどう折り込むか?
単一ダクトにおけるエスキスの攻略ポイント
Step5:★★★★★
高さ制限の回避
屋上設備スペース:面積は約○○㎡とする。
屋上設備スペースは、設計条件となる床面積には算入されません。
(空冷ヒートポンプチラーユニット、キュービクルなど)
「プランには影響を与えないのでは?」と、思えるかもしれません。
しかし、学科試験の法規で習ったことをもう一度思い出してみてください。
施行令第2条六号
建築物の高さ・・・
「屋上設備スペース○○㎡+塔屋の床面積=建築面積の1/8以上」となる場合は、塔屋の部分も斜線制限の高さに含まれるということを知っておきましょう。
「屋上設備スペースは約○○㎡」という指定をされた場合、高さ制限に直結してきます。
その結果、後退距離を確保しても「塔屋」だけが道路斜線に当たるケースもありますよね?
ここでは、道路斜線を回避する方法として2つの方法を紹介しましょう。
悪い例
【塔屋を含むコアを1スパン後退させる】
最低後退距離を取ったうえで、塔屋のみを1スパン後退させる。
建物外形を圧迫することなく道路斜線を回避できるため、慣れた受験生はよくやりがちです。
それが手っ取り早くて
いいんじゃない?楽だし。
しかし、コアの裏側の「奥まったスペース」が出来てしまうため、プランニングに支障が生じます。
屋上テラスなどの配置によって消費できれば良いものの、そうでなければ奥のスペースの使い方に最後まで悩まされ、プランが遅れる原因にもなりますよね?
(コアを端に配置したとしても、廊下が長くなり部屋を置けるスペースが狭くなります。)
良い例
【建物の奥ゆき寸法を1m縮めて、塔屋の高さを少し下げる】
建物の奥ゆき寸法を縮めて後退距離を1m増やした場合、どれくらいのゆとりが出来るのでしょうか?
1mの後退による「高さのゆとり」
- +1m+1m=2m(水平距離+2m)
- 2m×1.25=H:2.5m(高さ+2.5m)
- 2m×1.50=H:3.0m(高さ+3.0m)
1m後退させるだけで、
かなりのゆとりが出来るね。
- 建物の奥ゆき寸法を縮める。
- 塔屋の高さを道路斜線ギリギリまで低くする。
- コアの位置に自由度を持たせつつ、プランニングを有利に進める。
・・・もうお分かりでしょうか?
どちらの対処法が、皆さんにとって「得」になるかは明らかですよね。
こちらの案のほうが、道路斜線を回避できるうえにプランニングにも影響がありません。
高さ制限の対処法
建物の奥ゆき寸法を1m縮めて、塔屋の高さを少し下げる。
ドライエリア
地下室を要求される場合、忘れてはならないものが「ドライエリア」です。
空調機械室などの設備室は、管理部門のエリアに計画することが望ましいもの。
外部からの搬入出を考慮した配置計画とも関わってくるので、押さえておきましょう。
ドライエリアの配置について
- 駐車スペースの取り方
- 建物内の管理コアの位置
- 建物内の空調機械室の収まり
ドライエリアは道路に向けるのか、ヘリあき側に面するのか?
その結果は、建物内の管理コアの位置や空調機械室の収まりによって変わります。
ドライエリアの計画
外部からの搬入出を考慮した位置(道路側、又はへりあき側)にドライエリアを計画する。
空調機械室
設備部門の中でもスペースを取られるのが空調設備室です。
※ 空調機械室の床面積=「空調対象床面積」×4%
建物の延べ床面積が2700㎡の場合:2700㎡×0.04=108㎡となります。
この室を1階に配置するとなると、結構ダメージ大きいですよね?
でか過ぎない?(^_^;)
1階のプランは厳しいね。
空調機械室の計画
- 1階(条件によっては地階)に配置すること
- 外部からの搬入出やメンテナンスが出来ること
- 各階に配置するダクトスペースに直結させること
「空調機械室」は面積も大きく、配置できる場所も限られてきます。
1階に計画する場合は、管理部門のプランニングにも大きく影響するといってよいでしょう。
プランがきつくなる場合は、通路のスペースを節約するのもひとつの手段です。
空調機械室は「外部からのみ出入りする」計画も、選択肢に入れると良いでしょう。
空調機械室の搬入口は
敷地のへりあき側でも大丈夫。
ダクトスペース
1階フロア、又は地下に空調機械室を設置する場合、その真上にDSが立ち上がります。
プランニングの終盤になって「DSを入れる所がない!」というのは、あるあるですよね?
そこで、「空調機械室とDSの繋がり」を踏まえたうえで、エスキスの対策を紹介しましょう。
エスキスへの応用
ダクトスペースは管理コアと一体化させることで、2階3階の利用者部門への干渉を回避できます。
・・ということは、1階の空調機械室も管理コアに隣接させて、「上部DS」をコブのように付け足すことで、「管理コアと一体化したダクトスペースの収まり」になりますよね?
- 管理用階段
- エレベーター
- ダクトスペース
(1グリッドに収める例)
この手法は、ダクトスペースをコンパクトに収納する1パタンとして覚えておくと良いでしょう。
DSと空調機械室の配置
1階の空調機械室は管理コアに隣接させて、上部DSをコアと一体化させる。
ダクトスペースは管理コアと一体化させることで、利用者部門への干渉をさせない。
天井のふところ
空調機から空気を送風するダクトは天井裏のスペースを通ります。
ダクトを収めるための天井裏のふところスペースは「梁下:500mm」ですよね?
ここでは、天井裏のふところスペースを踏まえた「階高算定」の例を2つ紹介していきます。
空気を搬送するには
天井裏のスペースが必要。
- 大梁せい:800mm
- ダクトスペース:500mm
- 天井高さ:2700mm
- 階高=800+500+2700=4000(4m)
カチカチカチ・・
屋上庭園+客土の指定
客土500mmの部分を〇〇㎡以上確保し、客土の上端レベルは通路と同レベル程度とする。
令和元年の課題「屋上庭園に客土指定(高さ:500mm)+レベル合わせ」の指定のケースです。
このケースを取り入れた「階高算定」の例も一緒に紹介しましょう。
- 屋上スラブ下がり:700mm
- (客土:500mm+防水層200mm)
- 大梁せい:800mm
- ダクトスペース:500mm
- 天井高さ:2700mm
- 階高=700+800+500+2700=4700(4.7m)
カチカチカチ・・・
公共施設内に計画する大空間においては「天井高の指定」は十分に想定されます。
断面スケッチを丁ねいに書き出し、階高を正確に計算できる力を身につけておきましょう。
階高の算定について
- 断面スケッチを丁ねいに書き出す。
- それぞれの部材、ふところ寸法を書き込む。
- 天井高さに数値を積み上げ、階高を正確に算定する。
階段の計画(1.5~2回転)
断面検討で階高を算出できたことに安心してはいけません。
階高が高くなるということはつまり、「階段の平面」にも影響が生じることを押さえておきましょう。
そうだった!
階段の計画を忘れてた。
7m×7mグリッドのオードソックスな「1.5回転の階段」です。
(通路の有効巾:2,250-400-100=1,850 > 1,800mm)
シンプルな形状なので、慣れてしまえば意外と不便なく作図できます。
階高を高くする場合は、利用者コアを収めるグリッドは7m×7m以上が必要です。
経済スパンに収まる形状なので、いつでも書き切れるようにしっかり準備しておきましょう。
1.5回転の階段を描くコツ
- 階段に「1.5回転」と記入する。
- 階ごとに扉の位置を反転させる。
- 階ごとに矢印の起点を反転させる。
単一ダクトの情報の仕分け(参考)
クリックすると開きます。
単一ダクトが要求された場合の「メモを残しておく」対応法を紹介します。
よくあるのは「プランニングの後で、ダクトスペースを入れる場所がない」ことですよね?
ダクトスペースが
入らないよ~(泣)。
泣かない泣かない!
単一ダクトの対処法
- ダクトスペースが必要
- ダクトスペースはコアに収める
- 管理用コアの入るグリッドを大きめにする
- 空調機械室はダクトスペースに隣接させる
ダクトスペースは
管理用コアに収める。
なるほど。それそれ!
1.キーワードから、そこに関わる工程をピックアップする
キーワード
- ダクトスペースが必要
- ダクトスペースはコアに収める
- 管理用コアの入るグリッドを大きめにする
- 空調機械室はダクトスペースに隣接させる
関わる工程
- 階高アップにより「斜線制限」に関わる
- 管理用コアの「スケッチ」を描いてみる
- 管理用コアの「スパン寸法」を考慮する
- 空調機械室を「平面検討」の中に折り込む
複数の工程に関わる。
メモで対応する。
2.関わる工程に必要なキーワードを予めメモとして残しておく
関わる工程にメモを残しておく
関わる工程にメモを残しておく
- 1.法規
- 3.スパン割り
- 6.平面計画
- 1.「天井のふところ:500mm」
- 3.「ダクトスペース:3×2」
- 6.「空調機械室+管理用コア」
予めメモで対応する!
3.エスキスの工程ごとに、メモをチェックして思い出して対応する
メモから思い出して対応する
プランニングを進めるまえに自分に書き残したメモをチェックします。
メモを見れば「DSを忘れていた事」に気付きますよね?
あれ?DSって何?
そんなものあったかな。
予めメモを残しておくことにより「プランニングの後で、ダクトスペースを入れる場所がない」状況を回避できます。
階段の「1.5回転」も
忘れずにメモしておこう!
結局の対策は、
「忘れる」が前提なのね。
忘れ物をしないために
- キーワードから、そこに関わる工程をピックアップする。
- 関わる工程に必要なキーワードを予めメモとして残しておく。
- エスキスの工程ごとに、メモをチェックして思い出して対応する。
お疲れ様でした、まとめに入ります。
一級建築士製図ブログ:単一ダクトとエスキスへの応用(まとめ)
今日のまとめ
- 単一ダクトの基本知識
- 単一ダクトのエスキスへの応用編
今日のおさらい!
単一ダクトの基本知識(まとめ)
2つの空調方式
- 中央熱源:建物全体の空調を主に1台の空調機でまかなう。
- 個別熱源:部屋ごとに熱源機を設けて、建物のある空間だけを空調する。
中央熱源方式の特徴
- 建物内の温度コントロールと換気を同時に行える。
- 熱源機の出力が大きく、建物全体の空調を1台でまかなえる。
- 熱源機を1ヵ所に集約して設置できるため、メンテナンスがしやすい。
個別分散熱源方式の特徴
- 熱源を各室やエリアごとに設けることから、個別制御ができる。
- 利用時間に応じて「室のみ・エリアのみ」を対象とした運転が可能なので省エネになる。
- 1台がクラッシュしても他の空調機は稼働できるので、建物全体への影響が小さくなる。
空調システム:熱と空気の流れ
- 空調機に外気を導入する。
- 熱源機からの熱を冷媒を通して空調機に送る。
- 外気と冷媒の熱交換によって温風や冷風をつくる。
- 空調機の動力でダクトを通して各室に空気を送る。
- 室内の不快な空気を空調機に戻し、外へ吐き出す。
新鮮な空気の循環により
快適な暮らしが出来るのです。
単一ダクトのエスキスへの応用編(まとめ)
単一ダクトの悩みは
この機会に解消しましょう。
エスキスへの応用編
・単一ダクトのシステム構成を理解しておく。
・単一ダクトのエスキスへ影響するポイントを洗い出す。
・必要なポイントを見据えたうえで、エスキスの工程に折り込む。
押さえるべきポイント
- 屋上設備スペース
- ドライエリア
- 空調機械室
- ダクトスペース
- 天井のふところ
エスキスに影響するもの
- 高さ制限
- 配置計画
- 平面計画
- スパン割り
- 階段の計画
高さ制限の対処法
建物の奥ゆき寸法を1m縮めて、塔屋の高さを少し下げる。
ドライエリアの計画
外部からの搬入出を考慮した位置(道路側、又はへりあき側)にドライエリアを計画する。
空調機械室の計画
- 1階(条件によっては地階)に配置すること
- 外部からの搬入出やメンテナンスが出来ること
- 各階に配置するダクトスペースに直結させること
- 管理用階段
- エレベーター
- ダクトスペース
(1グリッドに収める例)
DSと空調機械室の配置
1階の空調機械室は管理コアに隣接させて、上部DSをコアと一体化させる。
ダクトスペースは管理コアと一体化させることで、利用者部門への干渉をさせない。
階高の算定について
- 断面スケッチを丁ねいに書き出す。
- それぞれの部材、ふところ寸法を書き込む。
- 天井高さに数値を積み上げ、階高を正確に算定する。
1.5回転の階段を描くコツ
- 階段に「1.5回転」と記入する。
- 階ごとに扉の位置を反転させる。
- 階ごとに矢印の起点を反転させる。
単一ダクトとエスキスとの関係性を、すべてお伝えしてきました。
書き出してみると、想像以上にエスキスが忙しいですよね?
ひとつずつ丁寧に押さえていかないと、しくじります。
単一ダクトの指定は
エスキスが何かと忙しい。
公共施設では、建物全体を快適にできる全館空調はよく採用されているもの。
そのような事情から、「単一ダクト方式を要求される」ケースは十分に考えられます。
単一ダクトに直面したときでも、冷静に順を追って対処できる準備と心構えをしておきましょう。
最後まで記事を読んでいただき、本当にありがとうございます!
ああ、快適だね~♬
やっぱり全館空調は最高です。
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
知識をアウトプット!
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