一級建築士製図試験のエスキスにおける「スパン割り」は、いつも決め打ち。
しかし、スパン割りを甘く考えていると後になってプランは破綻してしまいます。
単純に「6m×7m」「7m×7m」のコマに当て込めば、それで良いのでしょうか?
ミス・スパン現象
- グリッドに室が収まらない。
- 用途のない?空間が生まれる。
- L型の屋上テラスが形成される。
これらはすべて「スパン割りの不整合」から起きるもの。
どのように決めるかについて明確なルールがないと、プランにしわ寄せが来ます。
「電卓を何度もたたいて消しゴムを使ってはやり直すこと」だけは避けたいですよね?
この製図ブログで紹介するのは、スパン割りの基本的な考え方と、変則スパンの使い方です。
いつもエスキスの「スパン割り」で苦しめられる受験生は必見!ぜひ取り入れてみて下さい。

立体構成要素

「スパン割り」

建物の骨格を決める
こんな人におすすめ!
- スパン割りの決め方が分からない。
- 均等スパンを使っても部屋が収まらない。
- 変則スパンに苦手意識があって使いこなせない。

スパン、スパン、スパン!
スパンが決まらない!



部屋が収まらない!
こんなスパン、使えるか!
製図ブログについて
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
一級建築士製図ブログ:エスキスの「スパン割り」の重要性
記事の難易度:★★★☆☆


エスキスにおける「スパン割り検討」は、とても重要なミッションです。
それを理解していないと、プランニングにおいて非常に苦しい展開となるでしょう。
実際のところ、スパン割りについては多くの受験生が誤った考え方をしています。
単純に「均等スパンに部屋を押し込めば、成りゆきで合格プランが出来る」とは限りません。



プラン完成までの道が遠い。





スパンが決まらないよ~。
スパン割りとはいっても、その正解はひとつではありません。
室面積からスパンを想定すれば、その選択肢は数多くありますよね?
それでは、どのようにしてスパン割りを構築するのでしょうか?
結論から言いますと、割り付けに必要となる「すべての情報」を集めることです。



まず始めに情報収集から!






スパン割りの決定要素
スパン割りを決める要素
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
- 規則的に配置する部屋



要チェック!
主にこの4つの要素がスパン割りの寸法を決める要素です。
(以下、立体構成要素と呼ばせていただきます。)
理由としては、計画の要点で「構造についての配慮」を問われるため。
室形状とグリッドが整合していないと、説得力のある回答が出来ませんよね?



書けることがない。
(計画の要点)


均等スパンの特徴について


均等スパンの特徴
- チビコマとの相性がよく、立体構成イメージが掴みやすい。
- 床面積からコマ数に換算することで、ゾーニングがしやすくなる。
- 「〇m×〇m」の均等スパンは、最初の一手としては有効な手段となる。
・チビコマとの相性がよく、立体構成イメージが掴みやすい。


「6m×7m」「7m×7m」の均等スパンは、いわゆる経済スパンのこと。
チビコマとの相性が良く、「立体構成」の大枠を捉えるきっかけとして役立ちます。



6×7、7×6
7×7・・・どれ?
・床面積からコマ数に換算することで、ゾーニングがしやすくなる。


敷地図で「6割りゾーニング」をする際には、スケール感をもっておきたいもの。
「40㎡≒1コマ」「50㎡≒1コマ」と置き換えることで、ゾーニングの手助けになります。



スケール感を持たせると
ゾーニングの精度が上がる。
・「〇m×〇m」の均等スパンは、最初の一手としては有効な手段となる。


「6m×7m」「6m×8m」「7m×7m」
スパン割りのヒントが掴めない場合は、とりあえず「均等スパンから始める」のもひとつの手段です。
汎用性のあるパタンなので、最初の一手としては成功率の高いスパン割りといえるでしょう。



始めは均等スパンから!
均等スパンの特徴
- チビコマとの相性がよく、立体構成イメージが掴みやすい。
- 床面積からコマ数に換算することで、ゾーニングがしやすくなる。
- 「〇m×〇m」の均等スパンは、最初の一手としては有効な手段となる。






変則スパンの特徴について
変則スパンは使える!
- いつも決まったコマ数で勝負できる。
- 大空間とその他のスパンを切り離して考えられる。
- スパンの細かい振り分けによって、プランを有利に進められる。



変則スパンを恐れるな!
・いつも決まったコマ数で勝負できる。


いつも決まったコマ数とは、「X方向6スパン×Y方向4スパン」のこと。
例えば、建築可能範囲によって間口寸法が「40m」しか取れなかった場合、均等スパンだと「8m×5スパン」になりますよね?
そうなると「X方向が5スパン」となり、コマ数が不足してしまうのです。
スパンの数が足りず、いつもの割り付けが出来なくなるために型を崩されてしまいますよね?
「40m」の制約を受けるなかでも「7,7,6,6,7,7,」とすれば、コマ数を確保できるのです。



基本の型を崩さない!
・大空間とその他のスパンを切り離して考えられる。


スパン割りは主に、大空間や屋上テラスの面積を目安にして決定します。
建物の間口寸法が「44m」取れる場合、均等スパンにすると余りが出ますよね?
その場合は大空間を「9m」スパンに、残り部分を「7m×5スパン」で割ることも可能です。



大空間を切り離せば、
変則スパンも使えます。
・スパンの細かい振り分けによって、プランを有利に進められる。


大空間の要求により「7m×7m」の均等スパンでは、グリッド内に収まらないときもあります。
建物の間口寸法を変えることなく、大空間を収めるための「8m」スパンを確保するには、どれかのスパンを「6m」に縮める必要がありますよね?
その目星が決まれば「7,7,7,7,7,7」→「7,7,6,7,8,7」とすることで「8,7」部分に大空間が収まります。



均等スパンから、
変則スパンに切り替えです。
変則スパンは使える!
- いつも決まったコマ数で勝負できる。
- 大空間とその他のスパンを切り離して考えられる。
- スパンの細かい振り分けによって、プランを有利に進められる。








一級建築士製図ブログ:エスキスで「スパン割り」を決めるコツとは?
記事の難易度:★★★★★


ここからは、スパン割りの「本題」に入ります。
スパン割りは、追求するにつれて奥の深い部分がありますよね?
しかし、ここを丁ねいに仕込むことで、プランニングを有利に進めることが出来るはず。
その結果、エスキス全体で見ると「時間の短縮」にも繋がるでしょう。
- スパン割りの作り方(理論)
- スパン割りの作り方(実践)
ここからは、スパン割りの「理論」から「実践」まで通してお伝えしていきます!



スパン割りは実に奥が深い!
スパン割りの作り方(理論)
まずはここから!
スパン割りの土台となる「建築部分」を決める。
スパンの調整パタン
・建物のY方向を決めてから、X方向でスパンを調整する。
・建物のX方向を決めてから、Y方向でスパンを調整する。
スパン割りの土台づくり
スパン割りを決める土台となるのは「建築部分」
割り付けをするまえに、建築部分のX寸法とY寸法を求める必要があります。
建築部分(X×Y)の求め方
- 建築部分のX寸法=敷地の間口寸法▲へりあき
- 建築部分のY寸法=「最大外形の床面積」÷X寸法
- 建築部分(X寸法×Y寸法)がスパン割りの土台となる








- 建築部分のX寸法=敷地の間口寸法▲へりあき
- 建築部分のY寸法=「最大外形の床面積」÷X寸法
- 建築部分(X寸法×Y寸法)がスパン割りの土台となる



建築部分のX寸法を決めて
最大外形からY寸法を求める!
仮想床と最大外形




駐車スペースと出入口の確保
- 敷地から建築部分を除いた所に、駐車スペースが取れるか確認する。
- 駐車スペースが確保できない場合は、建築部分の「Y寸法」を縮める。
- 横断歩道と駐車スペースから、利用者の「出入口」の位置を決めておく。



駐車スペースの確保よし!
横断歩道を渡ってからの出入口よし!
・建物のY方向を決めてから、X方向でスパンを調整する。
ゾーニングタイプ
- 吹抜け:100㎡
- 多目的ホール:200㎡
- 屋上テラス:150㎡
(大空間がメインにより、主に立体構成を要求されるケース)




吹抜け、無柱空間、屋上テラスが要求される「ゾーニングタイプ」でのスパン調整です。
X方向のほうが「スパンの数が多く、調整が効きやすい」ため、Y方向を軸にします。



タイプは2つ。
考え方も2つある。
・建物のX方向を決めてから、Y方向でスパンを調整する。
基準階タイプ
- 個室A:70㎡×4室
- 個室B:50㎡×6室
- 個室C:30㎡×8室
(個室がメインにより、面積も室数も異なる部屋を要求されるケース)




複数ある要求室の条件により、「X方向のスパンが決まってしまう」場合です。
ホテル、集合住宅、老人ホームといった「基準階タイプ」では、Y方向で調整を図ります。



X方向を軸にするか?
Y方向を軸にするか?
スパンの調整パタン
・建物のY方向を決めてから、X方向でスパンを調整する。
・建物のX方向を決めてから、Y方向でスパンを調整する。
スパン割りの作り方(実践)


スパン割りを制する!
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで「チビコマゾーニング」
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する


スパン割りを決めるのに、なぜチビコマゾーニングが必要なのか?
それは「立体構成を決定したうえで、スパン割りを考える」必要があるからです。



ここは大事なところ!
あとで読み返して下さい。
スパン割りの作り方
- チビコマゾーニングで「型」をつくる。
- 均等スパンで「立体構成」を成立させる。
- ボリュームの面積が「型」に収まるようにスパンで「成形」する。
- 「立体構成」を変えることなく、スパンだけを調整する。


スパン割りは、均等スパンで「型」をつくり、変則スパンで「成形」するというイメージです。
その中で、チビコマゾーニングで作った「立体構成」は、変えることがありません。
「百聞は一見に如かず」、ここからは実践を通して説明していきましょう!



型をつくり、成形する!
立体構成は変えないこと。
スパン割り3本ノック、始まります。



スパン割り3本ノック!
気合入れるぞ、ついて来い!
スパン割り(Mission1)


条件
- 屋上テラス:約200㎡
- 吹抜け1:150㎡以上
- 吹抜け2:約50㎡
- その他:大きなボリューム
(1)均等スパンで仮決め(型づくり)
- スパン割り(仮決め)
- X方向6コマ、Y方向4コマ
- チビコマゾーニングで「型」をつくる。
- 均等スパンで「立体構成」を成立させる。
チビコマゾーニング


チビコマゾーニングで「立体構成」を組み立てる。
出入口、動線ライン


出入口を起点に1階の動線ライン、2階3階の動線ラインを引く。
ボリュームを収める


道路からのアプローチと突き合わせ、1階のゾーニングを敷地図に書き出す。
立体構成要素を入れる


吹抜け、無柱空間、屋上テラスといった「立体構成」に関わる要素をはめ込む。
(各フロアで整合するまで、いくつかのパタンを試してみる)
その際に「1階のゾーニング」と突き合わせながら配置するのが、ポイントです。
コアを置く


1階と2、3階の動線ラインに沿わせる位置に、利用者コアと管理用コアを置く。
ボリュームを収める


残りのスペースに、残りのボリュームを収める。
立体構成要素に注目する


ここで、吹抜け・無柱空間・屋上テラスといった「立体構成要素」だけに注目しましょう。
1階フロアに集める


2階と3階に配置した「立体構成要素」を1階フロアに集めて、「ひとつの平面」にまとめる。
ひとつの平面にまとめる


(2)変則スパンで本決め(成形する)
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する。
- ボリュームの面積が「型」に収まるようにスパンで「成形」する。
- 「立体構成」を変えることなく、スパンだけを調整する。


X=40m、Y=28m


(建築部分:40m×28m / 敷地寸法:46m×35m)
Y方向:7m×4スパン


Y方向を軸にする


敷地の奥ゆき寸法が「28m」ということなので、Y方向は「7m×4スパン」
Y方向のスパンを軸にしたまま、ボリューム面積に合わせてX方向で調整を図ります。
チビコマ


屋上テラス:約200㎡


屋上テラス:200㎡÷14m=14.2m、X方向のスパンは14m→「7m×2スパン」となる。
残り寸法の割り付け


吹抜け:150㎡以上


ここで、残りの部分の寸法「26m」を見て「7m」「6m」で割り付けられることを確認する。
吹抜け:150㎡÷14m=10.7m、X方向のスパンは12m→「6m×2スパン」となります。
チビコマ


吹抜け:約50㎡


1階の風除室の上に位置する吹抜けの面積は、「6m×7m=42㎡<約50㎡」
今のスパンでは”面積が不足”することになるが、一時保留にして割り付けを進めていく。
残り寸法の割り付け


残り7m×2スパン


ここでも残りの部分の寸法「14m」を見て「7m×2スパン」で割り付けられることを確認する。
チビコマ


吹抜け:約50㎡


1階の風除室の上に位置する吹抜けの面積は「6m×7m=42㎡<約50㎡」、足りません。
スパン調整


コアの寸法が不足


X方向のスパン調整により「6m、6m」→「5m、7m」に変えると「7m×7m=49㎡」
しかし、隣りの利用者コアが入るスパンが「5m×7m」となるため、1グリッドでは収まらない。
チビコマ


動線ラインに注目する


スパン割りの軸をX方向からY方向に切り替えて、Y方向のスパン調整をこころみる。
ここで、南から2スパン目を横切っている動線ラインに注目しましょう。
スパン調整


吹抜け:約50㎡


動線ラインを含む「7mスパン」を「6m」に、吹抜けを含む「7mスパン」を「8m」に切り替える。
そうすることで、吹抜け「6m×8m=48㎡>約50㎡」の面積を確保できました。
スパン割り(確定)


スパン割り「X方向:7,7,6,6,7,7(計40m)」「Y方向:7,7,6,8(計28m)」に確定です。
スパン割りを制する!
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで「チビコマゾーニング」
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する
スパン割り(Mission2)


条件
- 個室A~G:約80㎡/室
- 屋上テラス:約200㎡
- 吹抜け:150㎡以上
- 1、2階:大きなボリューム
(1)均等スパンで仮決め(型づくり)
- スパン割り(仮決め)
- X方向6コマ、Y方向4コマ
- チビコマゾーニングで「型」をつくる。
- 均等スパンで「立体構成」を成立させる。
チビコマゾーニング


チビコマゾーニングで「立体構成」を組み立てる。
出入口、動線ライン


出入口を起点に1階の動線ライン、2階3階の動線ラインを引く。
ボリュームを収める


道路からのアプローチと突き合わせ、1階のゾーニングを敷地図に書き出す。
立体構成要素を入れる


吹抜け、無柱空間、基準階部分といった「立体構成」に関わる要素をはめ込む。
(各フロアで整合するまで、いくつかのパタンを試してみる)
その際に「1階のゾーニング」と突き合わせながら配置するのが、ポイントです。
基準階のコマを削る


基準階の使用しないスペースはコマを削って、床面積を節約します。
コアを置く


1階と2、3階の動線ラインに沿わせる位置に、利用者コアと管理用コアを置く。
通路を確保する


2階と3階の通路を確保するため、コアとなる「階段とエレベーター」を切り離します。
基準階のコマを削った部分(コアの背面)には、屋上テラスを配置して奥のスペースを消費する。
ボリュームを収める


残りのスペースに、残りのボリュームを収める。
立体構成要素に注目する


ここで、吹抜け・屋上テラス・基準階部分といった「立体構成要素」だけに注目しましょう。
ひとつの平面にまとめる


(2)変則スパンで本決め(成形する)
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する。
- ボリュームの面積が「型」に収まるようにスパンで「成形」する。
- 「立体構成」を変えることなく、スパンだけを調整する。


X=42m、Y=27m


(建築部分:42m×27m / 敷地寸法:48m×35m)
立体構成を確認する


基準階:約80㎡×7室


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わせて決めていく。
最も大きなボリュームとなる基準階の部分(約80㎡×7室)を先にスパンに収めます。
X方向:6m×7スパン


X方向を軸にする


個室は「7室」要求されていることから、X方向のスパンは「42÷7=6m」→「6m×7スパン」
X方向のスパンは「6m×7スパン」に拘束されるので、Y方向のスパンのみで調整する。
基準階:約80㎡×7室


残り寸法の割り付け


個室:約80㎡÷6m=13.3m、Y方向のスパンは14m→「7m×2スパン」となります。
ここで、残りの部分の寸法「13m」を見て「7m」「6m」で割り付けられることを確認する。
動線ラインに注目する


動線ライン:6m


屋上テラス:約200㎡


残りの「13m」は、廊下を含む動線ラインに「6m」を割り当て、通路のスペースを節約します。
屋上テラスに「7m」スパンを割り当て、床面積は「6m×5スパン×7m=210㎡>約200㎡」
チビコマ


スパン割り


吹抜け:150㎡以上


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わせて、収まりを確認する。
真ん中に位置する吹抜けの面積は「12m×14m=168㎡>150㎡」となり、結果OKですね。
立体構成の収まり


残りスペースの収まり


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わせて、収まりを確認する。
1階と2階の端に残した「2コマ×4コマ」のスペースにも、大きなボリュームを配置できます。
スパン割り(確定)


スパン割り「X方向:6,6,6,6,6,6,6(計42m)」「Y方向:7,6,7,7,(計27m)」に確定です。
スパン割りを制する!
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで「チビコマゾーニング」
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する
スパン割り(Mission3)


条件
- 大空間:150㎡以上
- 屋上テラス:約200㎡
- 吹抜け:約60㎡
- 2階:小部屋が複数ある
(1)均等スパンで仮決め(型づくり)
- スパン割り(仮決め)
- X方向6コマ、Y方向4コマ
- チビコマゾーニングで「型」をつくる。
- 均等スパンで「立体構成」を成立させる。
チビコマゾーニング


チビコマゾーニングで「立体構成」を組み立てる。
出入口、動線ライン


出入口を起点に1階の動線ライン、2階3階の動線ラインを引く。
なお、2階フロアには「小さな部屋が複数入る」ため、動線ラインを2本引いてます。(任意)
ボリュームを収める


道路や隣地からのアプローチと突き合わせ、1階のゾーニングを敷地図に書き出す。
立体構成要素を入れる


吹抜け、無柱空間、屋上テラスといった「立体構成」に関わる要素をはめ込む。
(各フロアで整合するまで、いくつかのパタンを試してみる)
その際に「1階のゾーニング」と突き合わせながら配置するのが、ポイントです。
コアを置く


1階と2、3階の動線ラインに沿わせる位置に、利用者コアと管理用コアを置く。
プランニングのイメージ


2階フロアは、数の多い部屋を裁けるようにするため、通路は回廊型としてます。(任意)
立体構成要素に注目する


ここで、吹抜け・無柱空間・屋上テラスといった「立体構成要素」だけに注目しましょう。
ひとつの平面にまとめる


(2)変則スパンで本決め(成形する)
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する。
- ボリュームの面積が「型」に収まるようにスパンで「成形」する。
- 「立体構成」を変えることなく、スパンだけを調整する。


X=44m、Y=26m


(建築部分:44m×26m / 敷地寸法:50m×33m)
チビコマ


2階の動線ラインに注目する


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わせて、収まりを確認する。
ここでは、「2階の動線ライン」に注目してスパンを割り当てます。
動線ライン:6m


Y方向を軸にする


奥ゆき「26m」のうち、動線ラインを含むスパンに「6m×2スパン」を割り当てる。
通路のスペースを節約して、部屋の入るスパンを大きくすることでプランを有利に進められます。
あとはY方向のスパン「7,6,6,7」を軸にして、X方向でスパン調整を図りましょう。
チビコマ


大空間:150㎡以上
屋上テラス:約200㎡


大空間(150㎡)+屋上テラス(200㎡)=合計:350㎡
合計面積(350㎡)÷奥ゆきスパン(26m)=Xスパン:13.4mより、「7m×2スパン」となる。
X方向で割り付ける


面積の微妙なバランス


大空間:14m×13m=182㎡>150㎡、屋上テラス:14m×13m=182㎡>約200㎡
2つに要求される面積に差があるため、同じグリッドでは少しだけ違和感がありますよね?
スパン調整


面積の微妙なバランスを改善するために「スパン調整」をこころみる。(任意)
面積のバランスを改善


残り寸法の割り付け


大空間:14m×12m=168㎡>150㎡、屋上テラス:14m×14m=196㎡>約200㎡(改善)
ここで、残りの部分の寸法「30m」を見て「6m」「7m、8m」で割り付けられることを確認する。
(例1:6m×5スパン=30m、例2:7m×2スパン+8m×2スパン=30m)
チビコマ


吹抜け:約60㎡


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わて決めていく。
吹抜け:60㎡÷7m=8.5m、X方向のスパンは「8m」としました。
吹抜け:約60㎡(OK)


残り寸法の割り付け


吹抜け:8m×7m=56㎡>約60㎡(利用者コアの入るグリッドは7m×7m)
ここで、残りの部分の寸法「15m」を見て「7m」「8m」で割り付けられることを確認する。
立体構成の収まり


管理部門の収まり


残り:7m、8m


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わて決めていく。
管理部門の収まりに少し無理があると仮定して「8m」を割り合てます。(任意)
2階の収まり(イメージ)


室数の多い部屋の収まり


通路は回廊型にする


2階フロアは、数の多い部屋を裁けるようにするため、通路は回廊型とする。(任意)
中央のスパンは通路のスペースを節約するため「5m」を挟み、南北のスパンは窓際に部屋を多く配置できるように「7m」を割り当てました。
チビコマ


グリッドに部屋が収まらない


スパン割りは、立体構成要素をまとめた「チビコマ」と突き合わて決めていく。
1階の大きな部屋の外形が、グリッドに収まり切らないときのスパン調整をこころみる。(任意)
部屋のスパンを広げる


動線ラインの幅を縮める


部屋が収まる部分のスパンを「1m」広げて「8m×2スパン」を確保したい。
その一方で、1階の動線ラインが通る「8m」スパンを「1m」縮めて「7m」に調整します。
スパン調整


吹抜けの形状を変える


Xスパンを「8m、7m」→「7m、8m」に調整することで、部屋の収まりは改善できる。
その一方で、吹抜けのグリッドが「7m×7m=49㎡<約60㎡」となり、面積が不足してしまう。
吹抜けの面積を補うため、奥ゆき寸法を「2m」伸ばして「7m×9m=63㎡>約60㎡」としました。
スパン割り(確定)


スパン割り「X方向:7,7,7,7,8,8(計44m)」「Y方向:7,5,7,7(計26m)」に確定です。
スパン割りを制する!
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで「チビコマゾーニング」
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する


お疲れ様でした、まとめに入ります。


一級建築士製図ブログ:エスキスの「スパン割り」の決め方(まとめ)






均等スパンの特徴
- チビコマとの相性がよく、立体構成イメージが掴みやすい。
- 床面積からコマ数に換算することで、ゾーニングがしやすくなる。
- 「〇m×〇m」の均等スパンは、最初の一手としては有効な手段となる。
変則スパンは使える!
- いつも決まったコマ数で勝負できる。
- 大空間とその他のスパンを切り離して考えられる。
- スパンの細かい振り分けによって、プランを有利に進められる。
スパン割りを決める要素
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
- 規則的に配置する部屋




スパンの調整パタン
・建物のY方向を決めてから、X方向でスパンを調整する。
・建物のX方向を決めてから、Y方向でスパンを調整する。
スパン割りを制する!
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで「チビコマゾーニング」
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに「調整」する


スパン割りの作り方
- チビコマゾーニングで「型」をつくる。
- 均等スパンで「立体構成」を成立させる。
- ボリュームの面積が「型」に収まるようにスパンで「成形」する。
- 「立体構成」を変えることなく、スパンだけを調整する。





解ける!解ける!
スパン割り、楽しい~!
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
理論と実践を交えながら「スパン割り」についてお伝えしました。
エスキスにおける「スパン割り」は、建物の骨格を決める大事な部分です。
その精度を高めることが出来れば、後のプランニングを有利に進められるでしょう。
スパン割りは「立体構成」との関わりを常に意識することが重要になります。
ひとつひとつの要素と丁ねいに向き合い、エスキスを克服していきましょう。



エスキスを克服!
スパン割りを極めるぞ!
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、学科からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
スパンを制するものは
プランニングを制する!






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