目指せ、一級建築士!
一級建築士製図試験において重要なスキルは3つ。
- 作図力
- エスキスの力
- 計画の要点の記述力
その3つの中でも、エスキスの力だけ伸び悩んではいませんか?
私自身もエスキスが克服出来なくて、頭を抱えた時期が何年もありました。
これは毎年に渡って共通テーマとなり、最後の鬼門となって受験生を苦しめるもの。
この記事では、エスキス「基準階タイプ」のスパン割りの方程式について解説していきます。
今年の製図課題が基準階タイプであれば、まさにビッグチャンス!
スパン割り検討のノウハウからパタン出しまで、攻略法をお届けします。
きっと役立つ情報が隠れているので、最後まで読んでいただければ幸いです。
「スパン割り」
「基準階タイプ」
「パタン出し」
こんな人におすすめ!
- 基準階タイプの課題に当たった。
- 基準階タイプのスパン割りを極めたい。
- 基準階タイプのエスキスを克服して合格したい。
今年の課題は?
・・ドキドキ・・
(・・課題発表・・)
今年の課題は
基準階タイプだよ!
(最悪の年を迎えてしまった。)
マジ!?( ゚Д゚)
今年の夏は終わった・・
一級建築士が授ける!エスキス「基準階タイプ」の攻略法
記事の難易度:★★★★★
基準階タイプ
- ホテル
- 老人ホーム
- 集合住宅
基準階タイプは多くの受験生が苦手意識に陥りがち。
しかし、その攻略法は確立されているため、心配は要りません。
パタン出しやスパン割りなど、ポイントだけを抽出して解説していきます。
基準階タイプは建物用途によって色々と個性はありますが、そういうものを一括りに捉えたうえで、エスキスの攻略法をお伝えしましょう。
あわわ、どうしよう・・
今年は無理かもしれない。
弱気になるな!
自分に負けてどうする?
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低層タイプと基準階タイプの違い
低層タイプと基準階タイプ
どちらが好みかな?
まず始めに、低層タイプと基準階タイプの違いについて、サクッと説明していきましょう。
それぞれのタイプにおいて、求められるエッセンスは異なり、難しさの捉え方も変わってきます。
低層タイプ
低層タイプは3階建てが定番となり、ゾーニングタイプとも呼ばれます。
例えば、「床面積300㎡、天井高6mの多目的ホール」が要求されたとしましょう。
これを1階に置くのと2階に置くのとでは、階ごとのボリュームバランスが変わってきますよね?
その床面積のコントロールにも多くの時間を割かれる傾向があり、同一部門を切り離して階またぎのゾーニングを強いられるケースもあります。
ゾーニングを千切って、
別の階に振り分けるのです。
ここが難しさのポイント!
- 共用部門・管理部門・第3部門などのゾーン分けを明快にする。
- 吹抜け・無柱空間・屋上テラス・地下空間など立体構成を成立させる。
- 大空間の収まり方に応じて、各階のボリュームバランスをコントロールする。
低層タイプは難しい?
文字通り、ゾーン分けと立体構成を同時に成立させなければならない難しい課題です。
3階建てとは言いつつも、その小さな箱の中に多くの要求をタイトに詰め込まなければなりません。
基準階タイプがいいね!
基準階タイプ
基準階タイプは「階数が不明」「延べ面積の指定なし」というのが主流となりつつあります。
しかし、延べ面積の指定が無いからと言って油断していると、今年に限って指定された場合に対処できずに足元を救われるリスクもあるため、その対策は必要といえるでしょう。
また、基準階タイプにおける基準階においては、要求室の要求が多く、室数の数も多いため、スパン割り検討に苦しむ受験生が後を絶ちません。
やっぱり低層タイプがいい。
ここが難しさのポイント!
- 高さ制限から逆算したセットバックと配置計画が求められる。
- 基準階に求められる要求室と室数により、スパン割り検討に時間が掛かる。
- 基準階の部分と1階2階の部分との繋がりを見ながら、立体構成を成立させる必要がある。
基準階タイプは難しくない?
スパン割りは求められる条件により難しくなる反面、建物を決めるヒントに繋がる要素とも言えます。
基準階タイプにおいては、「スパン割りを制する者はエスキスを制する」と言っても過言ではありません。
(・・・それは言い過ぎでは?・・・)
試験開始の合図です。
スパン割りを制する者は
基準階タイプを制する!
基準階タイプのエスキスとは?
基準階タイプのエスキスを組み立てるうえで、誰も教えてくれない重要なこと。
ここが重要ポイント!
基準階に合わせて下の階をつくる・・ のではなく・・下の階に合わせて基準階をつくる。
「え、本当に?」「マジっすか!?」って思いますよね?
その理由としてプランニングは、”基準階よりも下の階のほうが難しくなる”からです。
上の階からエスキスを安易に組み立ててしまうと、1階2階のプランニングに移ったときに身動きが取れなくなってしまうでしょう。
今までのエスキスは
一体、何だったんだ?
「下の階の構図を見据えながら基準階をつくる。」
この考えは、基準階タイプの用途に関係なく”共通のセオリー”となるので、頭に組み込んでおきましょう。
基準階に合わせて下の階をつくる・・ のではなく・・下の階に合わせて基準階をつくる。
基準階タイプのエスキスのスパン割り(準備工程)
まずはスパン割りの説明に入るまえに、基準階エスキスのポイントだけを抽出して解説しましょう。
(基準階にフォーカスするため、工程の紹介については一部省略してます。)
これから説明することは全てにおいて「スパン割りを決めるための準備工程」となるため、必ず目を通しておいて下さい。
基準階エスキスの
重要な工程となります。
スパン割り(準備工程)
- 作図用紙のチェック
- 計画の要点のチェック
- 要求図書のチェック
- 道路斜線のセットバック
- ボリュームのチェック
- 延べ面積より最大外形の算出
- 基準階のボリューム
- 建築可能範囲のチェック
- 基準階の個室の配置(チビコマ・バイコマ)
- 基準階タイプのパタン出し
- 基準階タイプのパタンの絞り込み
- 基準階と1階2階との突き合わせ
さあ、始めようか?
気合い入れるぞ!
1.作図用紙のチェック
作図用紙の面積表に注目しましょう。
この欄で基準階の階数を確認することが出来ます。
面積表、階数チェック!
階数をチェック
「×3」とある場合、1階2階を足すと5階建ての建物だとすぐに分かりますよね?
面積表で先に情報を掴んでおき、設計条件指定の階数は後から確認する程度でよいでしょう。
1階2階+3フロア=5階
2.計画の要点のチェック
計画の要点から、課題の特徴をピックアップします。
キーワードをチェック
計画の要点でチェック
- 吹抜け
- ○○ホール
- 屋上庭園
- 基準階に要求されるもの
設問にある「吹抜け」「○○ホール」「屋上庭園」、そして「基準階」に関するキーワードから、建物のイメージを立てておきましょう。
また、これらの要素が敷地図の上で「どのように配置するか?」を想像しておくと、課題文を読むときに建物のかたちが想像できるようになります。
設問とイメージ図は、
先にチェックしておこう。
3.要求図書のチェック
要求図書の特記事項は、建物に要求されるものがコンパクトに詰まった一覧表です。
課題条件を読み始めるまえに、この表から基準階のチェックポイントを頭に叩き込んでおきましょう。
部屋タイプと室数をチェック
- Aタイプ×9室
- Bタイプ×9室
- Cタイプ×9室
ユニットABC
個室は3タイプ!
- Aタイプ×6室
- Bタイプ×2室
- Cタイプ×2室
A1,A2,A3,A4,A5,A6
B1,B2,C1,C2…なるほど。
要求図書でチェック
この記載より、「どのフロアに何種類の部屋をいくつ配置するのか?」
課題文(要求室の表)を読むまえに先に情報を掴んでおくと、後の読み取りが楽になります。
情報の先取り
・・「課題文の読み取り」・・
読める!読める!
課題文が頭に入って来るぞ!
スパン割りの方程式に必要な情報は先に掴んでおく。
4.道路斜線のセットバック
「天井高指定」「空調設備」「屋上設備スペース」など、建物の高さに関わる部分にマーカーを入れる。
斜線制限のセットバック距離を正確に計算して、建築可能範囲(スパン割りを検討するエリア)を決める手掛かりにしましょう。
セットバックの距離は、
確実に計算しておくこと。
天井高指定
屋上設備スペース
建物の高さに関するワードは、
すべてチェックを入れましょう。
塔屋が道路斜線に掛かる
屋上設備スペースに「床面積」が指定されると、「塔屋」はどうなるでしょうか?
「屋上設備スペース○○㎡+塔屋の床面積=建築面積の1/8以上」
この場合、「塔屋の部分も斜線制限に掛かると一発アウト」となることに注意しましょう。
塔屋!アウト!
高さ要素をチェック
- 天井高指定を満たすための階高
- 梁下から天井裏のふところを確保するための階高
- 階高(屋上設備スペースにより塔屋をプラス)を重ねた建物全体の高さ
建物の高さを算出したうえで、斜線制限の「セットバック距離」を計算しましょう。
これによって敷地内の「建築可能範囲」が確定し、「スパン割り検討をするエリア」が決まるのです。
建築可能範囲は
正確に出しておこう。
「屋上設備スペース○○㎡+塔屋の床面積=建築面積の1/8以上」に注意する。
斜線制限のセットバック距離の算定に必要な情報は、先に抽出してまとめておく。
5.ボリュームのチェック
要求室の床面積より、各部門のボリュームを算出します。
カチカチカチ・・
共用部門のボリューム算定
電卓を叩いて、床面積の合計をメモしておく。
カチカチカチ・・
管理部門のボリューム算定
要求室の床面積より、各部門のボリュームを算出して書き出しましょう。
ボリューム
- 共用部門※※㎡
- 管理部門※※㎡
- ○○部門※※㎡
ボリュームチェック!
チェック!
各部門ごとにボリュームの床面積を計算する。
グリッド数をメモする
各フロアの各ボリューム(床面積)をグリッド数(コマ数)に置き換えましょう。
そうすることで、後々の平面検討に展開したときにチビコマ・バイコマへの対応が効きます。
ワンポイント!
ボリュームの床面積をグリッド(コマ数)に換算しておく。
6.延べ面積より最大外形の算出
1階2階のボリュームが決まったところで、延べ面積の計算に進みます。
まず始めに、基準階タイプにおける最大外形の計算式を書き出しておきましょう。
「基準階の床面積×階数」
カチカチカチ・・
「延べ面積の上限+仮想床」▲「基準階の延べ面積」
仮想床とは?
- 吹抜けの上部
- 無柱空間の上部
「残りの面積(1・2階の合計)」÷2
→ この計算結果が「最大外形」となります。
計算出来た?
ここでは、基準階の延べ面積の算定がひとつのネックとなります。
それについて、次の見出しで解説していきましょう。
7.基準階のボリューム
基準階のボリュームを算出する方法として、やってはいけないことがあります。
それは、「基準階の部屋の床面積の合計×廊下係数1.4」で計算しないこと。
やったらアカン。
一見すると合理的に見えますが、廊下係数は基準階の部屋の配置方法によって異なります。
それだけではなく、もっと深刻な結果となることがあるので話を進めていきましょう。
基準階のボリュームは「正確に割り出す」必要があります。
やってやるぞ!
例えば7階建ての場合、床面積に「+20㎡」の誤差があると、どうなるでしょうか?
あれあれ..💦
何かやばくないか?
基準階の階数:5
誤差:20㎡×5フロア=「+100㎡」まで膨らんでしまいます。
(~_~;)
ダメージがえぐい。
最大外形ギリギリの設計をしていた場合は大変です。
基準階の誤差「+100㎡」越えを収めるには大幅なプラン変更を余儀なくされるでしょう。
床面積を減らす施策として
- 2階に100㎡の吹抜けをつくる。
- 2階に50㎡の吹抜けと1階に50㎡のピロティをつくる。
- 建物全体のスパンの中で、各階のプランの影響の少ない所を探して間隔を1m縮める。
こちらに救済策を
乗せておきますね。
これだけの施策を1/400図のプランの中で試みるのは、かなりのエネルギーが必要ですよね?
その結果、他の間取りに影響が出たり、そのリカバリーも発生するので集中力が分散してしまいます。
余計な作業が積み重なることで、最終的にプランの詰めが甘くなったり、チェック不足に陥って取り返しのつかない結果となるかもしれません。
角番の神よ!
我を救いたまえ!
基準階プラン(仮)の書き出し
そうならないための対策としては、部屋を実際に配置して確かめるしかありません。
基準階に要求される「部屋」「廊下」「階段・エレベーター」など書き出してみましょう。
(1/400図が正確に把握できますが、慣れてくるとバイコマでも検討できます。)
注意点!
この作業の目的は、基準階のプランニングを決める事ではありません。
最大外形を算出するための「基準階の数値(床面積)が欲しい!」→ これが目的となります。
最大外形を算出する
基準階の数値が決まれば、最大外形を割り出すことが出来るようになります。
一見すると回りくどいように思えますが、この方法がもっとも近道となるので覚えておきましょう。
急がば回れってことね。
延べ面積OVERは、1フロア分の誤差×階数により、低層階に影響してくる。
基準階のボリュームは、実際に部屋を並べてグリッドを割り出し、正確な数値を算出すること。
8.建築可能範囲のチェック
最大外形が決まれば、いよいよ建築可能範囲が見えて来ます。
この範囲は、「スパン割り検討をするエリア」となるので、必ず押さえておきましょう。
- 建築部分のX寸法=敷地の間口寸法▲へりあき
- 建築部分のY寸法=「最大外形の床面積」÷X寸法
- 建築部分(X寸法×Y寸法)がスパン割りの土台となる
Y方向の2つの算定方法
- Y寸法=「最大外形の床面積」÷X寸法(敷地の間口寸法▲へりあき)
- Y寸法=「最大外形の床面積」÷X寸法「42m」
敷地が広い場合は、へり空きに関わらずX方向「42m」を基準にしてY方向を決めることも出来ます。
”42m”は重要ナンバー、
この数字は意識しておこう。
間口寸法:42m
スパン割りにおいて「42m」という数値には”意味”があります。
X方向の割り付けは「7m×6スパン=42m」「6m×7スパン=42m」、どちらでも対応できる数値となるため、フレキシブルな検討が可能となるのです。
I型・L型・ツインコリダーいずれのタイプでも相性の良い割り付けとなるので、X方向「42m」は意識しておきましょう。
7m×6、6m×7、
どちらも検討しておこう。
スパン割りの手掛かり
スパン割りを検討するエリアのX方向(間口寸法)は「42m」を基準に決める。
9.基準階の個室の配置(チビコマ・バイコマ)
「スパン割り検討をするエリア」が決まったので、その中でスパンを展開していきます。
サンプルとして「X方向:42m、Y方向:28m」のエリア内で、解説を進めていきましょう。
チビコマで行こう。
間口のコマ数を決める
X方向「42m」のチビコマの中で、それぞれ部屋を並べてみましょう。
コマ数は「6コマで収まるのか?それとも7コマ要るのか?」も、ここで判断する必要があります。
(コマ数の変更が手軽に出来るのはチビコマの強み!)
コマ数の変更
7m×6がダメなら
6m×7で試してみよう。
41m、40mのエリアでも
6コマのチビコマを使おう。
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで、要求室を並べてみる。
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに調整する。
10.基準階タイプのパタン出し
「パタン出し」ってめんどくさいですよね?
エスキスを速く進めたい方にとっては、やりたくない作業ではあります。
ここでは、私のエスキスレイアウトを例にして「パタン出しのイメージ」だけをお伝えしましょう。
このあたりから
だんだん忙しくなるぞ!
基準階の検討
エスキスの余白を活用する
基準階のパタン出し
チビコマでパタン出し
I型?ツインコリダー?
それともL型にする?
採用するパタンによって、基準階のボリュームが変わって来ますよね?
そのパタンによっては、最大外形にも影響が出るため、確認のための試算が必要となります。
リスクを最小限に抑えるには、「基準階のボリュームを正確にはじく」「中間チェックで面積表を書き出す」を心掛けましょう。
カチカチカチ・・・
手がしびれて来たよ!
ダメ、もう限界。
基準階のパタン出しは3つまで、必要以上に増やし過ぎないこと。
11.基準階タイプのパタンの絞り込み
パタン出しは選択肢が多くなるほど、ひとつ選ぶのに時間と労力と要するもの。
そうなるのは、「基準階だけを見てパタン出しを考えようとするから」と言えるでしょう。
選択肢はあるけど
決め手が見つからない。
もう一度言います。
「基準階だけを見てパタン出しをする」と、選ぶのに余計な時間とエネルギーを割くだけになる。
重要なことです。
パタンを厳選する方法について、その決定打となるものを授けます。
いずれも基準階を検討するうえで、絶対に見落としてはいけない必要不可欠なもの。
忘れてはならない!
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
立体構成要素となる3つの空間です。(要するにジャマもの)
基準階のパタン出しをする際には、1階2階に「大きな空間が収まるかどうか?」
敷地内に「駐車スペースや自転車置き場、屋外広場などが収まるかどうか?」を考えましょう。
そこまで視野に入れると成立しないパタンがたくさん消えるため、選択肢はかなり限られてきますよね?
ごめん。忘れてたよ。
1階2階が成立しないものは、パタン候補のベンチ入りすら果たせません。
いたずらに多くのアイデアをエントリーさせて、墓穴を掘らないようにしたいものです。
もう一度言います。
「基準階だけを見てパタン出しを考えようとする」と余計な時間とエネルギーを費やすばかり。
1階2階に要求される大空間も一緒に検討して、本当に必要なパタンだけを抽出しましょう。
そうすることで、ひとつのパタンに絞り込もうとしなくても、成立する形だけが残ります。
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
基準階のパタン出しは基準階だけでなく、1階2階に要求される大空間も登場させる。
12.基準階と1階2階との突き合わせ
最後の調整に入ります。
成立するパタンを採用する
1階2階と突き合わせる
上下階の突き合わせ
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
1階2階の要求室のボリュームにより、建物全体の調整が必要となることもあります。
基準階の収まりと1階2階の収まりを交互に確認しながら、建物の形状を合わせていきましょう。
スパン割りのイメージが
何となく見えて来たぞ!
基準階の収まりと1階2階の収まりを交互に確認しながら、建物全体の形状を合わせる。
基準階タイプのエスキスの工程(まとめ)
基準階エスキスのポイントだけを抽出して、イラスト付きでサクッと解説してきました。
(基準階にフォーカスするため、工程の紹介については一部省略してます。)
スパン割りを決めるための準備工程として、エスキスの工程も必ず目を通しておいて下さい。
要チェック!
スパン割り(準備工程)
- 作図用紙のチェック
- 計画の要点のチェック
- 要求図書のチェック
- 道路斜線のセットバック
- ボリュームのチェック
- 延べ面積より最大外形の算出
- 基準階のボリューム
- 建築可能範囲のチェック
- 基準階の個室の配置(チビコマ・バイコマ)
- 基準階タイプのパタン出し
- 基準階タイプのパタンの絞り込み
- 基準階と1階2階との突き合わせ
基準階タイプのエスキスで絶対にやってはいけないこと
アウト!
- 無柱空間の上に連続PC梁
- 屋上テラスの上に基準階を重ねる
- 吹抜けトップライトの上に基準階を置く
基準階タイプのエスキスで定番となる「やってはいけないこと」を3つ紹介します。
これから紹介するスパン割り方程式とも関係するため、押さえておきましょう。
アウト!
ガーン!
無柱空間の上に連続PC梁
失格!
無柱空間の真上に基準階を配置した典型的なケースです。
大空間を形成するPC梁の上部は同じ構造となるため、基準階は全てPC梁を採用する結果となります。
アウト!
不要なPC梁がイタズラに増えて、これはどう考えても不経済ですよね?
岡立ち柱で逃げるわけにもいきませんし、いずれにしても大減点は免れません。
これもダメ!
これもか・・今回は、
ボコボコにやられてるよ。
基準階の柱サイズを
小さくすれば良いのでは?
やめなさい!
屋上テラスの上に基準階を重ねる
屋上テラスの上に基準階となると、柱はピロティ構造となります。
これでは構造的に不安定ですし、そもそも「屋上テラス」としての体を成していません。
基準階を決める際に「基準階しか見えていない」ことによる典型的なケースといえるでしょう。
アメージング!
素晴らしい建築作品だ。
吹抜けトップライトの上に基準階を置く
これをやってしまうと間違いなく一発アウト。(若しくは大減点)
トップライト(天窓)は屋根に設置するもので、空に開放される窓のことです。
計画の要点で「トップライトの活用法」を問われたときに、何と答えれば良いのでしょうか?
トップライトに
蓋をしてるからね・・
セーフ!
トップライトではなく、建物内の吹抜けであれば問題ありません。
(余談ですが、混同しないようにしましょう。)
アウト!
- 無柱空間の上に連続PC梁
- 屋上テラスの上に基準階を重ねる
- 吹抜けトップライトの上に基準階を置く
誰もが一度は「やったことのある失敗」ではないでしょうか?
(ちなみに私はすべてコンプリートしてます。(笑))
基準階タイプのエスキスで定番となる「やってはいけないこと」を3つ紹介しました。
来年も資格学校に
通うハメになるかもね。
基準階タイプのエスキスは基準階のセットバックに要注意!
基準階の床面積を絞り込むために「セットバック」の手法があります。
このときに注意するべきは「基準階のコア位置は、そのまま1階2階に降りてくる」ということ。
・・・これを意識していないと、エスキスが破綻してしまうかもしれません。
そこを踏まえ、「セットバックする側にコアを配置する」と、どうなるのでしょうか?
ここは重要な話です。
特に注意しておきましょう。
基準階のセットバック
「屋上設備スペース○○㎡+塔屋の床面積=建築面積の1/8以上」
この条件により、塔屋が道路斜線に掛からないようにセットバックを試みます。
セットバックさせたは良いが・・
基準階の平面は成立しても、そのコアが1階2階に降りてくるとスペースが分断されてしまいます。
このスペースどうする?
1階2階の平面ではコアの位置が微妙なところに配置されて、階段の奥にデッドスペースが生まれます。
L字型の部屋ってある?
コアの奥のスペースが使えない?
奥まったL字型のスペースに入る都合の良い部屋はありません。
コアを両端に移動すると通路が長くなり、まとまった部屋が入り難くなります。
良かれと思ってやったのに。
セットバックしたコア位置により、プランニングにも悪影響を及ぼす。
その結果、基準階は良くても「1階2階の平面が破綻する」結果となるのです。
基準階を安易にセットバックさせることは禁物、これだけは回避しておきましょう。
セットバックの3原則
- 基準階と1階2階部分に大きなボリュームの差があること。
- セットバックした空間に「何を置くのか?」が決まっていること。
- セットバックにより、コアの位置がプランニングの支障にならないこと。
セットバックの活用法
隣地境界線に面する居室で、「採光不適合の回避」のためのセットバックは取り入れておきましょう。
セットバック!
アンド・トップライト!
基準階タイプのエスキスはツインコリダーを安易に採用しない
「ツインコリダー」は、採光を必要とする部屋の数を稼ぐときに非常に便利な形式です。
しかし、「中庭を作って快適な空間にしたい」といった安易な理由で採用すると、痛い目にあいます。
え!?ダメなの?
ツインコリダーのリスク
コアの軸が中央に配置される
1階2階にまとまったスペースがない
「ツインコリダーがダメ」と言うよりは、「センターコアが危険」と言ったほうが適切かもしれません。
コアや吹抜けの位置が平面の中央に来るため、奥ゆきのある大きなスペースが取りづらくなります。
(大きな空間がなく、小さな部屋をたくさん要求される課題であれば、センターコアはOK)
1階2階を見たうえで
採用することが大事だね。
センターコアは1階2階のゾーニングを分断する
ツインコリダー(センターコア)を採用すると、大空間を収めるスペースが無くなります。
その理由は、中央に配置されたコアが「1階2階のゾーニングを分断する」構図となるからです。
センターコアを採用する
1階2階のゾーニングが分断される
利用者部門と管理部門が同じくらいのボリュームであれば、成立するかもしれません。
建物の用途にもよりますが、コアが真ん中に降りてくるとプランニングの難易度は上がってしまいます。
床面積の大きい大空間を収めるための、まとまったスペースが取りづらくなるからです。
基準階だけでなく1階2階との整合性をとるには、「シンプルなコア位置」が一番の選択といえるでしょう。
ツインコリダーの代替え策
- 基準階タイプのエスキスで絶対にやってはいけないこと
- 無柱空間の上に連続PC梁
- 屋上テラスの上に基準階を重ねる
- 吹抜けトップライトの上に基準階を置く
- 基準階タイプのエスキスは基準階のセットバックに要注意!
- 下の階の平面ではコアの奥にデッドスペースが生じる
- 基準階タイプのエスキスはツインコリダーを安易に採用しない
- 中央に配置されたコアが下の階のゾーニングを分断する
基準階のセットバックの条件
- 基準階と1階2階部分に大きなボリュームの差があること。
- セットバックした空間に「何を置くのか?」が決まっていること。
- セットバックにより、コアの位置がプランニングの支障にならないこと。
一級建築士が授ける!エスキス「基準階タイプ」のスパン割りの方程式
記事の難易度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
スパンを決める要素
- 吹抜け
- 無柱空間
- 屋上テラス
- 基準階の要求室と室数
建物の骨格を決めるための柱の間隔、それがスパン割りです。
スパン割りは求められる条件が多くなる一方で、建物を決めるヒントに繋がります。
基準階タイプにおいては、「スパン割りを制する者はエスキスを制する」と言っても過言ではありません。
スパン割りを制する者は
基準階タイプを制する!
「スパン割りを制する者は基準階タイプを制する」
X=42m,Y=28mの枠
スパン割り検討は「X=42m,Y=28m」の枠内で展開することとします。
そこを踏まえたうえで、スパン割りを決めるためのセオリーを紹介していきましょう。
X方向を軸にするか?
Y方向を軸にするか?
スパン割りを制する!
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
X方向”42m”を軸にして、
Y方向でスパンを調整しよう。
スパン割りの2つのアプローチ
・X方向を「42m」に設定して、要求室を均等スパンで割り当てる。
・Y方向を「28m」に設定して、1階2階の要素を変則スパンで割り当てる。
基準階タイプのエスキスのスパン割り(X方向)
X方向:42m
基準階タイプでは、X方向の”42m”を「どう割り付けるか?」を先に決めておく必要があります。
「6コマ×4コマ」のチビコマを使って、要求室の条件に習って部屋を並べてみて下さい。
部屋を並べてみよう。
X方向:42mで決めること
- 「7m×6スパン」で、割り付ける。
- 「6m×7スパン」で、割り付ける。
- 「6コマで収まるのか?それとも7コマ必要なのか?」
まず始めは「6コマ×4コマ」の型にハメ込んで部屋を配置しましょう。
そのときに「あれ?コマが1つ足りない・・」となったときには、割り付けを変更します。
あと1コマ欲しい・・
お!ひらめいたぞ!
「7m×6スパン」→「6m×7スパン」
要求室以外に屋上テラスなどを確保したい場合でも使える手法です。
このようなケースで、コマ数の変更が容易に出来るのはチビコマの強みと言えるでしょう。
かなり使える方法です。
コマ数の変更
スパン割りの極意
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで、要求室を並べてみる。
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに調整する。
基準階のスパン割りは、部屋を置いてみなければ分かりません。
要求室の数と収まり具合によっては、基準階のスパン割りに直結してきます。
X方向”42m”において「7m×6スパン」「6m×7スパン」のどちらを採用するのか?
始めは「7m×6スパン」、足りなければ「6m×7スパン」、この感覚を押さえておきましょう。
「7×6」「6×7」
42mはどちらもいける。
X方向:42mで決めること
- 「7m×6スパン」で、割り付ける。
- 「6m×7スパン」で、割り付ける。
- 「6コマで収まるのか?それとも7コマ必要なのか?」
スパン割りの2つのアプローチ
・X方向を「42m」に設定して、要求室を均等スパンで割り当てる。
・Y方向を「28m」に設定して、1階2階の要素を変則スパンで割り当てる。
基準階タイプのエスキスのスパン割り(Y方向)
Y方向:28mで決めること
- 「X方向」の間口寸法から決めていく。
- 「室面積÷X=Y」により奥ゆき「Y寸法」を決める。
- 「X方向」を均等スパンに決めて「Y方向」で割り付けを調整する。
・・ということで、「Y方向」のスパン調整に進みます。
ここでは要求室の床面積(約70㎡)という条件で、割り付けのパタンを紹介します。
要求室の「グリッドの取り方」とY方向の「残り寸法」に焦点を当てながら説明していきましょう。
ここから一気に
難易度が上がります。
スパン割りを制する!
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
グリッドの取り方
- (左)Y方向:6m×2スパン
- グリッドにバルコニーを含む。
- (右)Y方向:7m×2スパン
- グリッドにバルコニーと廊下を含む。
決まっている条件
Xスパン7m、要求室の床面積(約70㎡)
カチカチカチ・・・
Y方向のスパンは「要求室のグリッド」と「残りの割り付け」を意識しながら割り付ける。
残り寸法
- (左)28m▲6m×2=16m
- グリッドにバルコニーを含む。
- (右)28m▲7m×2=14m
- グリッドにバルコニーと廊下を含む。
カチカチカチ・・・
ここがポイント!
Y方向のスパンは「要求室のグリッド」と「残りの割り付け」を意識しながら割り付ける。
残り寸法に収まるもの
- 無柱空間
- 屋上テラス
(1階2階の要素)
Y寸法28mを見据えて、
残り寸法の割り付けに注目する。
1階2階の立体構成要素が、「残り寸法」に入るものになります。
基準階を検討する際には、これらの要素も必ず登場させて検討することが重要です。
Y方向でスパンを調整する
Y方向:28mで決めること
- 「X方向」の間口寸法から決めていく。
- 「室面積÷X=Y」により奥ゆき「Y寸法」を決める。
- 「X方向」を均等スパンに決めて「Y方向」で割り付けを調整する。
要求室の床面積(約70㎡)のグリッドは、床面積(約35㎡)×2室の条件でも応用が利きます。
2室ペアのグリッドにしても
Y方向の考え方は変わりません。
スパン割りの2つのアプローチ
・X方向を「42m」に設定して、要求室を均等スパンで割り当てる。
・Y方向を「28m」に設定して、1階2階の要素を変則スパンで割り当てる。
グリッドの取り方
- (左)Y方向:9m×1スパン
- グリッドに要求室のみ。
- (右)Y方向:6m×2スパン
- グリッドに廊下を含む。
決まっている条件
Xスパン7m、要求室の床面積(約70㎡)
カチカチカチ・・・
Y方向のスパンは「要求室のグリッド」と「残りの割り付け」を意識しながら割り付ける。
残り寸法
- (左)28m▲9m×1=19m
- グリッドにバルコニーを含む。
- (右)28m▲6m×2=16m
- グリッドにバルコニーと廊下を含む。
カチカチカチ・・・
残り寸法に収まるもの
- 無柱空間
- 屋上テラス
(1階2階の要素)
残り寸法を求める方程式
X方向のスパンは既に決まっているため、Yの寸法は「1階2階の要素(㎡)÷X寸法」
(例)「屋上テラス 約300㎡」÷「7m×3スパン」≒14m → 残り寸法Y:7m×2スパン
Y方向でスパンを調整する
カチャカチャ・・
カチカチカチ・・・
Yスパンを割り付けるときに「残り寸法」を確認して、割り付け出来るかどうか?
そこに視点を向けることで、スパンがあっさりと決まります。
Y方向のスパンは「要求室のグリッド」と「残りの割り付け」を意識しながら割り付ける。
Y方向で意識するポイント!
スパン割りを決める際の要求室以外の「残りスペース」は、1階2階フロアの無柱空間・屋上テラスのグリッドに直結します。
つまり、「要求室のスパン割りを決める」と同時に、”残りスペース”より「1階2階のスパン割りを決める」ことになるのです。
Y方向のスパン割りは、要求室のグリッドと残りの割り付けを意識する。
カチャカチャ・・
カチカチカチ・・・
残り寸法に収まるもの
- 無柱空間
- 屋上テラス
(1階2階の要素)
残り寸法を求める方程式
X方向のスパンは既に決まっているため、Yの寸法は「1階2階の要素(㎡)÷X寸法」
(例)「無柱空間:約200㎡」÷「7m×2スパン」≒14m → 残り寸法Y:7m×2スパン
この方程式に当てはめるだけで、検討するべきスパン割りのバリエーションもかなり絞られるでしょう。
床面積÷X方向=Y方向、
残りスペースでスパンが決まる。
Y方向:28mで決めること
- 「X方向」の間口寸法から決めていく。
- 「室面積÷X=Y」により奥ゆき「Y寸法」を決める。
- 「X方向」を均等スパンに決めて「Y方向」で割り付けを調整する。
スパン割りの2つのアプローチ
・X方向を「42m」に設定して、要求室を均等スパンで割り当てる。
・Y方向を「28m」に設定して、1階2階の要素を変則スパンで割り当てる。
「インナーバルコニー」から「跳ね出しバルコニー」に変更する際には、道路境界線又は敷地境界線からのセットバック距離が短くなります。
「道路斜線、法的採光のための離隔距離に抵触しないか?」→ これを必ず再チェックして下さい!
基準階タイプのエスキスのスパン割り調整(タイプ別)
ここでは「集合住宅」を例にして、スパン割りの調整についてお伝えしましょう。
(スパン割りに焦点を当てるためコアの表記は省略してます。)
スパン割りの方程式は、集合住宅に限らず「老人ホーム」や「ビジネスホテル」においても応用が利くので、この機会にぜひマスターしておきましょう。
3つのタイプで解説!
- I字型タイプ
- L字型タイプ
- ツインコリダー型タイプ
最後まで諦めない!
スパン調整は粘り強く。
それでは、スパン割りの調整について基準階の「タイプ別」に詳しく解説していきましょう。
【I字型タイプ】
I字型タイプ
I字型タイプは、X方向「42m」を目安に基準階を作るのが前提条件です。
割り付けは「7m×6スパン」、「6m×7スパン」のいずれかをベースにして考えます。
I字型「42m」の原則
- X方向の間口寸法は「42m」、要求室を均等スパンで割り付ける。
- Y方向には1階2階の空間・3階の要求室の床面積を意識した割り付けをする。
とりあえず、
X方向を先に決める。
Y方向のスパン調整
- y1:1階2階の無柱空間の床面積(上限値~下限値)に合わせてスパンを調整する。
- y2:要求室(住戸A1~A6)の床面積(上限値~下限値)に合わせてスパンを調整する。
- 奥ゆき寸法は?
- 廊下をグリッド内に2mに含める。
- バルコニーをグリッド内に2m含める。
- バルコニーをグリッドに含めず、片持ちスラブにする。
- 奥ゆき寸法は?
奥ゆき寸法のスパン調整に関しては、”段階的に2mずつ調整を図る”こと。
そうすることで、「建築可能範囲のY寸法」に帳尻を合わせていくことが可能となります。
スパンを2mずつ
段階的にずらしていく。
I字型「42m」の原則
- 要求室(住戸)の幅に合わせて、均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- 残り寸法に1・2階の空間が入ることを意識しながら割り付ける。
スパン割りを制する!
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
「インナーバルコニー」から「跳ね出しバルコニー」に変更する際には、道路境界線又は敷地境界線からのセットバック距離が短くなります。
「道路斜線、法的採光のための離隔距離に抵触しないか?」→ これを必ず再チェックして下さい!
【L字型タイプ】
スパン割りを決めるための方程式を「42m」×「28m」を例にして説明してきました。
しかし、課題によっては「42m」または「28m」を確保できないケースもありますよね?
その場合は、どこかのスパンに「均等スパンとは異なるスパン」を入れる必要が出てきます。
スパンが決まらない。
、めんどくさい!
L字型タイプ
敷地の幅が狭いケースだとX方向「42m」を確保できないこともありますよね?
また、要求室に「間口〇m以上の指定」があると、L字型を採用するパタンに至ることもあります。
ここでは、建築可能範囲のX寸法「41m」という条件で話を進めさせて下さい。
スタンバイOK!
コア位置でスパンを調整する
- X方向の間口寸法は「41m」、要求室は均等スパン、”コア”のグリッドで調整する。
- Y方向は3階の屋上テラスと、妻側(東)に向く住戸の幅に合わせたスパンで割り付ける。
- 奥ゆき寸法は?
- 廊下をグリッド内に2mに含める。
- 廊下をグリッドに含めず、片持ちスラブにする。
- バルコニーをグリッド内に2m含める。
- バルコニーをグリッドに含めず、片持ちスラブにする。
- 奥ゆき寸法は?
コアを犠牲にするのだ!
そこに解決のヒントがある。
「スパンを2mずつ調整」
インナー廊下、インナーバルコニー
跳ね出し廊下、跳ね出しバルコニー
Y方向のスパン調整
L字型の3つのポイント
- L字型は要求室(住戸)の幅を均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- コアの収まるグリッドによりX方向(41m)の帳尻を合わせていく。
コアでX方向を調整して、
Y方向は2mずつズラしていく。
建築可能範囲のX寸法「41m」の条件で説明させていただきました。
”変則スパンとなる部分にコアを収納する”ことで、X寸法「41m」にスパン調整して収めた例です。
スパン割りを制する!
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
【ツインコリダー型タイプ】
要求室(住戸)の室数が多い場合、I字型・L字型では収まりません。
採光を必要とする居室の室数が多い場合には、ツインコリダー型を採用することもあります。
ここでは、建築可能範囲の寸法「40m」という条件で話を進めていきましょう。
ツインコリダー!
ツインコリダー
- X方向の間口寸法は「40m」、帳尻は”コア”のグリッドで調整する。
- Y方向は、妻側(東西)に向く住戸の幅に合わせたスパンで割り付ける。
- 奥ゆき寸法は?
- 廊下をグリッド内に2mに含める。
- 廊下をグリッドに含めず、片持ちスラブにする。
- バルコニーをグリッド内に2m含める。
- バルコニーをグリッドに含めず、片持ちスラブにする。
- 奥ゆき寸法は?
- 段階的に2mずつ試しながら、X方向「40m」の帳尻を合わせていく。
インナー廊下
インナーバルコニー
「スパンを2mずつ調整」
跳ね出し廊下
跳ね出しバルコニー
コア位置でスパンを調整する
ツインコリダーの割り付け
- X方向は”コア”を含む変則スパンで割り付ける。
- Y方向は要求室の幅に合わせた均等スパンで割り付ける。
- X方向は住戸の奥ゆき寸法の取り方で「40m」の帳尻に合わせる。
X方向の変則スパンはコアを収納するグリッド部分で調整することが可能です。
「廊下をグリッドに含める」、「バルコニーを片持ちにする」など色々と段階的に試しながら、X方向「40m」に収まるように持って行くと良いでしょう。
手玉に取るように
スパンが決まっていく。
スパン割りを制する!
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
誤解しないように!
これまでの解説で設定した建築可能範囲の寸法は、あくまでも一例です。
X寸法「42m」→I字型を採用する、X寸法「41m」→L字型を採用する。
X寸法「40m」→ツインコリダーを採用する、という事では決してありません。
【無柱空間の上部に基準階を乗せる方法】
無柱空間の上部に基準階を乗せると連続PC梁となり、これは好ましくありません。
・・とはいえ、この2つを上下階で重ねることで、ゾーニングが丸く収まるケースもあります。
「どうすれば重ねられるのか?」といいますと、その方法はひとつしかないですよね?
どうすれば乗るの?
9mスパンを採用する
Y方向に「9m」スパンを入れること。
9mスパンであればPC梁は不要となり、無柱空間(多目的ホール)の上に基準階を重ねることが可能となります。
(大梁の上に柱を立てる必要もありません。)
これは覚えておきたい。
9mスパンは、無柱空間の「辺長比」「縦横比」の指定に注意して取り入れて下さい。
これは要注意ね!
エスキスの基準階タイプについて、ポイントを絞って解説してきました。
部屋の配置とコアの位置、1階2階との位置関係まで考えると奥が深いですよね?
3階建てのゾーニングタイプとは異なり、考える要素が多くて難しく感じるかもしれません。
基準階タイプって
すっごく奥が深いね。
しかし、スパン割りを克服すれば、基準階タイプをほとんど極めたと言えるでしょう。
スパン割りをヒントに建物の骨格を決めることが出来れば、エスキスは8割ほど完成したようなものです。
ポイントのおさらい
無柱空間の上部に基準階を乗せる場合は「9mスパン」を採用する。
- 基準階は要求室(住戸)の幅を均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- コアの収まるグリッドにより建築可能範囲に帳尻を合わせていく。
基準階タイプのエスキスは1階2階に合わせて基準階をつくる
基準階にフォーカスして、スパン割りの方程式をお伝えしてきました。
スパン割りを極めて合格したい受験生の方は、何度でも読み返してみて下さい。
これまでの解説を踏まえて、基準階タイプにおいて”最も大事なこと”をお伝えします。
もう、お腹いっぱい。
何度でも言います!
- 「基準階に合わせて下の階をつくる」×
- 「下の階に合わせて基準階をつくる」〇
基準階タイプの心得
「基準階に合わせて下の階をつくる」のではなく「下の階に合わせて基準階をつくる」
下の階で押さえておくもの
- 無柱空間
- 屋上テラス
一周まわって大事なこと。
これを意識するだけで、基準階のパタン出しはかなり絞られてくるはず。
結局のところ「1階2階のゾーニングに合わせて基準階をつくる」のが成功法となります。
なぜなら、プランニングは”基準階よりも下の階のほうが難しくなる”からです。
下のフロアに入る大きな空間を想定したうえで基準階を作ると、全体的に上手くまとまるでしょう。
精進します。
基準階タイプの心得
「1階2階の動線・ゾーニングを見据えながら基準階をつくり、建物の形状を決める。」
お疲れ様でした、まとめに入ります。
一級建築士が授ける!エスキス「基準階タイプ」のスパン割り(まとめ)
スパン割り(準備工程)
- 作図用紙のチェック
- 計画の要点のチェック
- 要求図書のチェック
- 道路斜線のセットバック
- ボリュームのチェック
- 延べ面積より最大外形の算出
- 基準階のボリューム
- 建築可能範囲のチェック
- 基準階の個室の配置(チビコマ・バイコマ)
- 基準階タイプのパタン出し
- 基準階タイプのパタンの絞り込み
- 基準階と1階2階との突き合わせ
「スパン割りを制する者は基準階タイプを制する」
・建物のY方向を固定して、X方向でスパン調整をする。
・建物のX方向を固定して、Y方向でスパン調整をする。
カチャカチャ・・
カチカチカチ・・・
・X方向を「42m」に設定して、要求室を均等スパンで割り当てる。
・Y方向を「28m」に設定して、1階2階の要素を変則スパンで割り当てる。
X方向:42mで決めること
- 「7m×6スパン」で、割り付ける。
- 「6m×7スパン」で、割り付ける。
- 「6コマで収まるのか?それとも7コマ必要なのか?」
- スパン割り(仮決め)
- 均等スパンで、要求室を並べてみる。
- スパン割り(本決め)
- 均等スパンから、変則スパンに調整する。
Y方向:28mで決めること
- 「X方向」の間口寸法から決めていく。
- 「室面積÷X=Y」により奥ゆき「Y寸法」を決める。
- 「X方向」を均等スパンに決めて「Y方向」で割り付けを調整する。
Y方向のスパンは「要求室のグリッド」と「残りの割り付け」を意識しながら割り付ける。
I字型「42m」の原則
- 要求室(住戸)の幅に合わせて、均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- 残り寸法に1・2階の空間が入ることを意識しながら割り付ける。
L字型の3つのポイント
- L字型は要求室(住戸)の幅を均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- コアの収まるグリッドによりX方向(41m)の帳尻を合わせていく。
ツインコリダーの割り付け
- X方向は”コア”を含む変則スパンで割り付ける。
- Y方向は要求室の幅に合わせた均等スパンで割り付ける。
- X方向は住戸の奥ゆき寸法の取り方で「40m」の帳尻に合わせる。
基準階のスパン割り方程式
- 基準階は要求室(住戸)の幅を均等スパンで割り付ける。
- 住戸の奥ゆきスパンの調整は、”段階的に2mずつ調整を図る”。
- コアの収まるグリッドにより建築可能範囲に帳尻を合わせていく。
「インナーバルコニー」から「跳ね出しバルコニー」に変更する際には、道路境界線又は敷地境界線からのセットバック距離が短くなります。
「道路斜線、法的採光のための離隔距離に抵触しないか?」→ これを必ず再チェックして下さい!
基準階を2階フロアに重ねる
2階フロアを1階フロアに重ねる
1階フロアは全てを受け止める
基準階タイプの心得
「基準階に合わせて下の階をつくる」のではなく「下の階に合わせて基準階をつくる」
これだけは覚えて下さい。
「基準階に合わせて下の階をつくる」のではなく「下の階に合わせて基準階をつくる」
施設の利用者は、1階からアプローチして基準階に向かうため、当然の考えといえるでしょう。
もうスパンは怖くない。
「基準階タイプ」のエスキスを解説してきました。
今年の製図課題が基準階タイプであれば、栄光を掴むビッグチャンスです!
お伝えした攻略法の要領をつかみ、実践を重ねてモノにすれば、どんな課題が来ても怖くはありません。
角番復活ブログで紹介したエスキス攻略法を完全武装して、製図試験の魔物を迎え撃ちましょう。
基準階タイプ、最高です!
スパン割りを極める!
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