一級建築士製図試験において、最も重要視されるのは法規の理解です。
設計課題の用途によっては「採光」もその中のひとつに伸し掛かって来ます。
採光が要求される建物用途
- 保育所
- 集合住宅
- 学校の教室
その用途に当たってしまった方は覚悟を決めて下さい。
- 最短の手数で計算する方法は?
- いつ、どのタイミングで検討するのか?
- 採光アウトが発覚したときの対処法はあるのか?
採光を知るにはまず、「採光補正係数」を理解することからのスタートです。
この製図ブログでは、「採光の知識」から「採光補正係数」の計算方法、そして「ランクⅣを回避する7つの方法」に至るまで、3部構成でお伝えします。
「D/H」
「採光補正係数」
「セットバック」
こんな人におすすめ!
- 採光の計算方法が分からない。
- セットバックの出し方が分からない。
- 採光補正係数を大きくする方法が知りたい。
D/H
「採光関係比率」
誰だ、おまえ?
D/Hだと!?
D/H×6-1.4
「採光補正係数」
・・おまえ・・
D/Hの差し金か?
床×1/10
「床面積の割合」
新しい登場人物か?
「セットバック」
「セットバック」
引っ掛かるものか!
D/H×D/H×D/H
「採光×D/Hバトル」
ランクⅣ!退場!
製図ブログについて
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、角番からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
こちらから
採光の数値を確認できます。
クリックすると開きます。
採光補正係数(令第20条)
算定式 | |
住居系 | $$\frac{ D }{ H }*6-1.4$$ |
工業系 | $$\frac{ D }{ H }*8-1.0$$ |
商業系 | $$\frac{ D }{ H }*10-1.0$$ |
天窓の場合「×3」、縁側の場合「×0.7」)・・・数値の最大値は「3」、マイナスは「0」とする。 |
$$D:水平距離$$ | 隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物 もしくは当該敷地の他の建築物までの距離 |
$$H:垂直距離$$ | 開口部の直上にある建築物の部分までの距離 (建物の頂部から窓の中心までの距離) |
法規のおさらいです。
法第28条、令第19条
建物の居室の種類 | 床面積に乗じる割合 |
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校の教室、保育園の保育室 | $$\frac{ 1 }{ 5 }$$ |
住宅の居住のための居室 | $$\frac{ 1 }{ 7 }※$$ |
病院・診療所の病室、寄宿舎の寝室、下宿の宿泊室、児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)、児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの | $$\frac{ 1 }{ 7 }$$ |
上記以外の学校以外の教室、病院・診療所・児童福祉施設等の居室のうち、入院患者・入所者の談話、娯楽等の目的のために使用されるもの | $$\frac{ 1 }{ 10 }$$ |
※2023年4月1日に施行される法規の概要
「住宅の居室に必要な採光上有効な面積は、原則として床面積の1/7以上。
ただし、照明設備の設置や有効な採光方法を確保する措置がなされている場合は、その居室の床面積の1/10までの範囲内とする。」
おさらい終わり。
一級建築士製図ブログ:採光と採光補正係数の落とし穴
やらかしてしまった「ランクⅣ」
解いても解いても止まらない「ランクⅣ」
その結果はトラウマとなり、何度も受験生を苦しめます。
たった1室の採光が足りないだけで、全てが台無しになるなんて、心が折れそうですよね?
努力を水の泡にしないためにも、ここで立ち上がりましょう。
この記事で紹介する法規の内容は、「一級建築士製図試験に特化したものに集約」しています。
そのため、試験で問われる可能性の低い分野を一部割愛していることをご了承ください。
採光のペナルティの重さ
法規のペナルティとは?
製図試験における法令違反のペナルティとは、=「失格」を意味するもの。
それは、どれだけ魅力的なプランを作り上げたとしても「一発アウト!」ということ。
しかし、そのペナルティは法規の項目によって、減点の重みが異なることはご存知でしょうか?
法規のペナルティの重さ
- 集団規定
- 単体規定
- 防火規定
- 採光・換気
- 街並みの秩序を乱すもの
- 避難時において人命に関わるもの
- 施設を利用するにあたって快適さに欠けるもの
- (最もペナルティが小さい)
意外かもしれませんが「採光」と「換気」は法令違反の中では「最も罪が軽い」ということ。
それよりも人命に関わる〇防〇特の書き忘れのほうが「重罪になる」ということです。
とはいえ、相対試験である以上は法令違反をしないに越したことはありません。
採光の神様、採光の仏様、
どうか角番の私をお助け下さい。
製図試験における採光の落とし穴
採光厳守の条件は、受験生のエスキスを苦しめます。
しかし、そんな採光規定にも「緩和」があることはご存知ですよね?
本試験で迷ったり、足元を救われないためにも、ここで押さえておきましょう。
セットバックが緩和される条件とは?
知っておきたい!
【採光の規制が緩和される周辺環境】
- 公園・広場
- 川・水面・線路
- 歩行者専用道路
緩和される条件
将来にわたって宅地造成などの計画が無く、その環境が維持される”公的”なもの。
採光が緩和される敷地内においては、「セットバックの距離」がプラスされます。
嬉しいね。♬
採光規定の緩和
- 道路側のセットバックの起点は、道路の反対側の境界線から。
- 公園や河川などのセットバックの起点は、その幅の「1/2」だけ外側とみなす位置から。
セットバックが緩和されない落とし穴(必読!)
要注意!
【採光の規制が緩和されない周辺環境】
- 敷地内の並木通り
- 個人が所有する空地
- 駐車場、隣りの庭や池
間違えなように!
ダメだから!
課題文の敷地図には、周辺環境が文字だけの場合と、細かく図示されているケースがあります。
その年によっては、公園や広場のように見える緑豊かな「お隣りの敷地」が描写されているのです。
やりやがったな
ここで騙されてしまっては、試験開始たった10秒で不合格の運命が決まってしまうことでしょう。
(並木通りや遊歩道に至っては、隣地との関係性によって扱いが変わることがあります。)
だまされるか!
緩和されない理由
所有者の意図で宅地造成や用途変更など、その環境が変わる可能性のある”私的”なもの。
- 公園・広場
- 川・水面・線路
- 歩行者専用道路
- 敷地内の並木通り
- 個人が所有する空地
- 駐車場、隣りの庭や池
製図試験における採光補正係数の落とし穴
採光補正係数の式
$$\frac{ (D) }{ H }*6-1.4$$
採光補正係数には落とし穴があります。
それは、「水平距離(D)の取り方」によるものです。
(以降、セットバックと呼ぶ)
ここでは住居系地域において、その落とし穴となる「セットバック」について解説していきましょう。
セットバック!
採光補正係数のセットバックの起点について
ここでは、採光の「セットバック」についてイラストで解説していきましょう。
採光補正係数が最も厳しくなるのは、デッドゾーンで表記してある低層部です。
隣地境界線に面しているため、セットバックが短いと採光補正係数は「1」より小さくなります。
さらに、バルコニーを跳ね出しすることにより後退距離の起点が変わります。
セットバック「D」は柱の出からではなく、バルコニーの壁面になることを忘れないで下さい。
おお!まずい・・
これは非常にやばいぞ!
道路はこっち!
あえて、「採光補正係数の限界に挑む」ことはありません。
隣地境界線に公園や広場がない限りは、バルコニーの付く居室は道路側に向けるのが無難な選択です。
採光補正係数の落とし穴!
バルコニーを後から付け足す場合は、法令違反(ランクⅣ)の危険信号!
後退距離「D」の起点がバルコニーの先端からに置き変わり、採光リスクが高まります。
バルコニーは「採光」と「高さ制限」にも影響してくるので、見直しを必ずしておきましょう。
やらかした!
バルコニーにやられたよ。
基準階のセットバックで、採光不適合を回避できる
基準階タイプになると、採光不適合のリスクはさらに高まります。
階数が増えれば増えるほど、「隣地境界線に面する低層部」に採光の制限が掛かるのです。
採光不適合に最もさらされる領域が、デッドゾーンで表記してあるところ。
どの課題においてもランクⅣに抵触するのは、この部分といってよいでしょう。
デッドゾーンを解消する最も有効な手法が「基準階のセットバック」になります。
高層部を1スパン後退させることで、隣地境界側からも採光が取れるようになるからです。
基準階をセットバック
セットバックが上手にハマれば、建物の表(道路)と裏(隣地)から採光が取れる。
さらに、後退させた屋根にトップライトを設けることで、隣地側での採光リスクは解消されるでしょう。
基準階のセットバックの条件
- 基準階と1階2階部分に大きなボリュームの差があること。
- セットバックした空間に「何を置くのか?」が決まっていること。
- セットバックにより、コアの位置がプランニングの支障にならないこと。
採光に必要なセットバック距離の取り方の違い
建物用途によってはバルコニーが要求されるケースがあります。
セットバックの取り方は、バルコニーの要求があると配置の工夫が必要です。
その考えをお伝えするために、CADで作成したイラストを使って解説していきましょう。
手が込んでるね。
要注意!
バルコニーが要求される場合は、想像力が必要です。
「バルコニーは跳ね出し、それともインナーバルコニーにするか?」によって、セットバックの取り方が変わって来ます。
ここは重要な2択です。
「D」の取り方の違い
- インナーバルコニーにする場合は、柱の出から「D」を取る。
- 跳ね出しバルコニーにする場合は、へり空きを2m余分に取ってバルコニーの先端から「D」を確保する。
どちらの構想でセットバックを取るかを予め掴んでおきましょう。
そのイメージが曖昧だと、後になってバルコニーの取り方により、想定が狂って痛い目に遭います。
どちらを選ぶか迷うね。
採光関係比率
$$①D:隣地境界線からの距離-0.35(柱の出)$$$$又は-0.075(バルコニーの壁厚)$$
$$②H:0.6+4.0*階数+0.8(梁せい)+1.0(窓の中心)$$
$$③採光関係比率=\frac{ D }{ H }$$
Dから柱の出を引くのを
忘れないようにしましょう。
セットバックの取り方の違い
- インナーバルコニーにする場合は、柱の出から「D」を取る。
- 跳ね出しする場合は、ヘリ空きを2m余分に取ってバルコニーの先端から「D」を確保する。
- どちらの構想でバルコニーを計画するかは、スパンの割り付けによって決まって来る。
採光に必要なセットバック距離を最短で導く方法
採光に関わる要素
- 建物の高さ
- スパンの寸法
- 採光居室の床面積
この3つにより、建物の「後退距離」が決まります。
$$\{\frac{ D }{ H }*6-1.4\}*窓の面積S>床面積A*\frac{ 1 }{ 10 }$$
配置計画を進めるためには「採光のセットバックを早く知りたい!」
「D」を知りたい!
知りたい!知りたい!
しかし・・
- 計算が複雑
- 不確定要素が多い
- 後で変わるケースもある
セットバックの距離はエスキスをかなり進めてみないと確定できません。
・・とはいっても、へり空きを決めないことにはエスキスが展開しないですよね?
ここではセットバックの距離を「最短で導く方法」についてお伝えしましょう。
どうするの?
セットバック距離を最短で導く計算方法
- 採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
- 建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
- スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
採光補正係数の式
$$\{\frac{ D-0.35 }{ H }*6-1.4\}*窓の面積S>床面積A*\frac{ 1 }{ 10 }$$$$※0.35m=柱の出の寸法$$
OK!
D=の式に置き換えると?
$$\{\frac{ D-0.35 }{ H }*6-\underline{1.4}\}*\underline{S}>A*\frac{ 1 }{ 10 }$$$$→\frac{ (D-0.35) }{ \underline{H} }*\underline{6}>\{\frac{ A*\frac{ 1 }{ 10 } }{ S }\}+1.4$$$$→(D\underline{-0.35})>\{\frac{ A*0.1 }{ S }+1.4\}*\frac{ H }{ 6 }$$$$ → D>\{\frac{ A*0.1 }{ S }+1.4\}*\frac{ H }{ 6 }+0.35$$
ムリ。
$$D=\{\frac{ A*0.1 }{ S }+1.4\}*\frac{ H }{ 6 }+0.35$$
当然ながら、こんな式は覚える必要はありません。(^_^;)
覚えられない!という方の為に、私が「採光早見表」を作成しました。
- 採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
- 建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
- スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
採光早見表
うわわ、何だこれ!?
すごい情報が出て来たぞ!
この表で注目すべきは「階数」と、セットバック(m)の右にある「階数との関係」です。
2つの関係性を掴んでおくことで、エスキスの早い段階で「D」の近い値を知ることが可能になります。
採光のデッドゾーンとなる低層階でのセットバック距離「D」が足りているか?
さきほどの採光早見表より統計を取ったうえで、私が”数値”と”条件”を以下にまとめました。
2階部分の「D」を求めるうえで、階数に「数値をいくら足せば良いか?」を押さえておきましょう。
簡単な方法です。
採光早見表を活用する
- 用途地域と階数をチェック、採光居室の床面積からスパン寸法を想定する。
- スパン割りに応じて「階数」に「採光早見表」に記載してある「数値」を加える。
- 住居系地域では「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」→ 早見表に「1m」を加える。
床面積×1/10 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数±0m | 階数±0m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-2m | 階数-1m |
住居系地域では、「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」の場合は、上記の表に「1m」を加える。
例:3階建ての2階に配置する6mスパンの教室(80㎡)のセットバック距離は?
$$D=3(階)+0(m)=3m・・・(柱の出を含む)$$
階数からセットバックを導く。
床面積×1/7 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数+1m | 階数+1m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-1m | 階数-1m |
住居系地域では、「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」の場合は、上記の表に「1m」を加える。
例:5階建ての2階に配置する7mスパンの住戸(80㎡)のセットバック距離は?
$$D=5(階)+1(m)+1(m)=7m・・・(柱の出を含む)$$
階数からセットバックを導き、
条件によって「1m」を加える。
床面積×1/5 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数+1m | 階数+1m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-1m | 階数-1m |
住居系地域では、「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」の場合は、上記の表に「1m」を加える。
例:3階建ての2階に配置する6mスパンの保育室(60㎡)のセットバック距離は?
$$D=3(階)+1(m)=4m・・・(柱の出を含む)$$
階数からセットバックを導く。
住居系地域では、「5階建て以上かつ床面積80㎡以上」の場合は、上記の表に「2m」を加える。
例:5階建ての2階に配置する6mスパンの教室(80㎡)のセットバック距離は?
$$D=5(階)+1(m)+2(m)=8m・・・(柱の出を含む)$$
セットバックは
全部これでいける!
採光早見表を活用する
- 用途地域と階数をチェック、採光居室の床面積からスパン寸法を想定する。
- スパン割りに応じて「階数」に「採光早見表」に記載してある「数値」を加える。
- 住居系地域では「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」→ 早見表に「1m」を加える。
採光早見表
採光セットバックの距離Dは、7mスパンと6mスパンとで異なります。
(Dは、柱の出(0.35m)の部分からの距離)
建物用途に応じて「採光早見表(A×1/5)(A×1/7)(A×1/10)」とタブを切り替えて下さい。
建物の階数とセットバック距離は、緩やかな比例関係にあります。
早見表から階数との関係によって算出する方法は、この統計に基づいたもの。
セットバックの距離は、「階数」によって若干の振れ幅があるため、チェックは必要です。
- 採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
- 建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
- スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
$$①採光関係比率=\frac{ D }{ H }$$
$$②採光補正係数=①*6-1.4$$
$$③採光上有効な開口面積=窓の面積S*②$$
$$④採光上有効な開口面積>床面積*\frac{ 1 }{ 10 }$$
電卓のご準備を
採光早見表から求めるセットバックは、あくまでも配置計画を進めるための”参考値”です。
エスキスが進み、居室の床面積からスパンを決めた段階で再チェックすることを心掛けましょう。
ここでは、採光補正係数から「採光上有効な開口面積」を算出して「足りているか?」を確認します。
スタンバイOK!
採光適合の計算確認
- D÷H=①
- ①ANS×6-1.4=②
- ②ANS×窓サイズ(W×H)
- ③ANS → メモする。
- 床面積A÷10=④
- ④ANSと③を比較して、③が大きいかを確かめる。
アスカの電卓を使ったとしても、なかなかの手数ですよね?
その中でも特に「❸の答えをメモしておき➍の答えと比較する」ところに手間が掛かってしまいます。
メモをするのが面倒だった私は、手数を減らすために”ひとつの妙案”を考えました。
$$採光上有効な開口面積>床面積*\frac{ 1 }{ \underline{10} }より,$$$$→「採光上有効な開口面積*\underline{10}>床面積」に置き換える。$$
この式を活用して下さい。
とても計算が楽になります。
この手順がオススメ!
- D÷H=①
- ①ANS×6-1.4=②
- ②ANS×窓サイズ(W×H)=③
- ③ANS×10
- ➍の数値が床面積Aより大きいかを確かめる。
いかかでしょうか?・・手数がひとつ減りましたよね。
床面積に掛ける数値「1/5・1/7・1/10」に応じて、それぞれの逆数を採光補正係数に掛ける。
割り算を「×5」・「×7」・「×10」に置き換えることで、手軽な電卓操作で確認が出来てしまいます。
カチカチ「×10」
この方法はいいね!
セットバック距離を最短で導く計算方法
- 採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
- 建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
- スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
採光補正係数を操作してランクⅣを回避する7つの方法
本題となる「採光補正係数を操作してランクⅣを回避する7つの方法」を紹介していきましょう。
その中には、採光補正係数とは関係なくランクⅣを回避する方法もありますので必見です。
いくつかの方法を組み合わせることで、ピンチを切り抜けられるかもしれません。
採光の計算式
$$①採光関係比率=\frac{ D }{ H }$$
$$②採光補正係数=①*6-1.4$$
$$③採光上有効な開口面積=窓の面積S*②$$
$$④採光上有効な開口面積>床面積*\frac{ 1 }{ 10 }$$
カチカチカチ!
採光補正係数を操るには、採光の計算式を理解していなければなりません。
「計算式のどこを操作したのか?」を掲示しながら、解説をさせていただきます。
ランクⅣを回避するぞ!
採光補正係数を操作してランクⅣを回避する7つの方法
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
1.ゾーニングで回避する。
$$採光補正係数=\frac{ D }{ H }*6-1.4$$
そもそもの話にはなりますが、「採光補正係数の計算は本当に必要ですか?」
法的採光を回避するための一番手っ取り早い方法は、道路側を活用することではないでしょうか?
道路斜線を回避するためのセットバックを取っているので、これを使わない手はありません。
ゾーニング
ゾーニング
採光不適合を回避するための最もシンプルな方法は「ゾーニング」です。
法的採光が要求される居室と、それ以外の部屋のエリアを明快に振り分けること。
ここについての解説は文章が長くなってしまうため、記事の最後に説明させていただきます。
あとでガッツリ説明します。
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
2.スパンを圧縮して回避する。
$$採光補正係数=\frac{ \underline{D} }{ H }*6-1.4$$
採光補正係数を大きくする最も効果的な方法は後退距離:Dを増やすこと。
(・・とは言っても、簡単なことではありませんよね?)
しかし、さきほど紹介した「ゾーニング」が出来てさえいれば、不可能ではありません。
どうやるのさ?
建物の中央部の「通路を含む」スパンを縮める。
それと引き換えに後退距離「D」を伸ばすことで、採光補正係数をかなり大きくすることが出来ます。
こちらは、製図ブログの別記事でも詳しく紹介しているので下記を参考にして下さい。
それは爽快!
ぜひやってみたい!
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
3.バルコニーを縮めて回避する。
こちらは、バルコニーが要求される建物用途であれば使える手法です。
バルコニーの跳ね出し長さを2m→「1.5m」まで縮めることで、後退距離:Dは大きくなりますよね?
バルコニーを縮めて
合格を引き寄せるのだ!
$$採光補正係数=\frac{ \underline{D} }{ H }*6-1.4$$
(インナーバルコニーを計画した場合は使えません。)
プランを変更することなく採光補正係数を大きくできるため、こちらも知っておくと便利な方法です。
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
4.窓の面積を大きくして回避する。
「窓のサイズを大きくする」
腰壁の高さ(1.1m以上)をキープしたまま、梁下まで窓にすることで面積を大きくできます。
排煙窓を設ける。
$$採光上有効な開口面積>床面積*\frac{ 1 }{ 10 }$$
$$\underline{窓の面積S}*採光補正係数=採光上有効な開口面積$$
どうしても採光補正係数を大きく出来ないケースでは、「窓の面積を大きくする」しかありません。
6mスパンの場合は、梁成を700mm(目安はスパンの1/10以上)まで抑えられるので、その分窓を上方向に大きくして、窓の採光面積を稼ぎましょう。
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
5.居室の床面積を限界まで削って回避する。
「居室の床面積を小さくする」
廊下の壁をずらして通路幅を大きくする。
・・といってもピンと来ませんよね?
どういうこと?
$$採光上有効な開口面積>\underline{床面積A}*\frac{ 1 }{ 10 }$$
この式の後ろにある「床面積A」が小さくなると、どうなるでしょうか?
$$採光上有効な開口面積>\underline{床面積A}*\frac{ 1 }{ 10 }→(小さくなる)$$
床面積Aを小さくする意味は、採光を確保するための「ハードルが低くなる」ことを指します。
つまり、採光補正係数を大きく出来ないなら、床面積を「要求約〇㎡」の最小値まで減らせばいいのです。
これも使える
テクニックです。
壁芯をズラすだけでも
床面積を調整できそうだね。
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
6.各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
$$採光関係比率=\frac{ D }{ H }$$
分母のHを「×フロア分」小さくするということ。
これは凄い発想だ!
「各フロアの階高を低くする」
この手法は階数が多くなるほど、その2階部分における「H」の効果が大きくなります。
それでは実際にどれほど大きくなるかと言いますと、残念ながら「微々たるもの」
なんだそれ!
$$採光補正係数=\frac{ D }{ \underline{H} }*6-\underline{1.4}$$
階高を下げて「H」が3フロア分小さくなったとしても、後ろの「-1.4」が影響しているためか、期待するほどの効果は得られません。
(7階建てくらいになると、それなりの回避策にはなるかも?)
この手法は「あと少し!、あと少しなんだけど・・」といった局面の”最後の施策”として、備えるくらいに留めておきましょう。
この方法は、
本当に最後の悪あがきだね。
窓のサイズを梁下まで大きくしている場合は、階高を下げることで窓のサイズも小さくなります。
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
7.最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
「トップライトを設ける」
意外にも忘れがちなのがこの手法です。
$$採光上有効な開口面積=天窓の面積S*採光補正係数*\underline{3倍}$$
トップライトのこと
完全に忘れてたよ。
最上階においてはトップライトを付けることで、無窓空間が「明るい採光天国」へと変化を遂げます。
採光が必要な要求室の数が多くて「残りの部屋を置くスペースが真ん中の無窓空間しかない!」
そういったときでも最上階であれば、どこでも「×3倍」の採光が確保できますよね?
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
ランクⅣを回避できるゾーニングをバイコマで解説!
採光不適合を回避するための最もシンプルな方法は「ゾーニング」
ポイントは「採光」が要求される居室と、それ以外の部屋の「振り分け」を明快にすることです。
採光リスクを最も免れる「ゾーニング」について、バイコマを使って解説していきましょう。
気合い入れるぞ!
ゾーニング
西と北は隣地境界線(住宅地)、東と南は道路境界線という条件設定で解説を進めます。
道路側には斜線に掛からないように後退距離を取っているので、採光については何の問題もありません。
採光面は道路側から
道路側において採光関係比率のDの起点は、「道路の反対側の境界線」
そのため、居室の採光面は必ず「道路側に向ける」ゾーニングにすることが原則です。
これ以降の説明で、法的採光が必要な居室については、「要・採光居室」と呼ばせていただきます。
2階3階のゾーニング
2階3階の「要・採光居室」も同様に、採光補正係数が有利な「道路側」に採光面を向けましょう。
これは凄く大事なこと。
スパン割りは「長手方向に間口を広げる」
そうすることで、要・採光居室の窓の面積を大きくすることが出来るので、覚えておきましょう。
続きを教えて!
動線ライン
採光面に向けて配置した「要・採光居室」に沿わせるように、動線ラインを各階に引きます。
動線ラインをしっかりと引く!
利用者コアを置く
利用者コアは「各階の動線からアクセスできる」位置におくこと。
そのため、1階の動線ラインと2階の動線ラインが「交差する付近」に利用者コアを配置します。
管理コアの位置
管理コアの位置においても、2階3階の動線ラインに沿わせるように配置します。
このときに1スパンずらして置くことで、サービスアプローチを確保しやすくするのがポイントです。
(1階に設備機械室など大きな室が入る場合は、プランが裁きやすくなる)
芸が細かいね。
採光が厳しいところ
大きな空間を収める
採光面積の確保が厳しくなる隣地境界線の側には、法的採光の要求のない大きな空間が向いています。
デッドゾーンとなる部分を「大空間で消費」して、採光の取れるエリアを残すようにしましょう。
デッドゾーン恐ろしいね。
残りの空間を収める
残りの空間を収めきったところで、ゾーニングが完成しました。
管理コアを1スパンずらしたところに「要・採光居室」を置くことも出来ますよね?
また、「吹抜け」は利用者コアに隣接させてセットにすることで、まとまりのあるプランに落ちつきます。
素晴らしい!
「採光」を確保するためのゾーニングは、お分かりいただけたでしょうか?
この機会に、さきほど紹介した「スパンを縮めてDを大きくする」を実践して見せましょう。
スパンを圧縮、これやりたい!
スパンを縮めてDを大きくする
2階3階の動線ライン(点線で示した部分)となるスパンに注目してみましょう。
この通路にゆとりがあると、通路幅とともにスパンを「7m→6m」に縮めることが出来ます。
建物全体がスリムになるとともにDを大きく、採光補正係数も大きくしてランクⅣを回避できるのです。
ランクⅣを回避!
合格が見えて来たぞ!
後退距離Dが小さいということは、「建物サイズが大きい=内部に余裕がある」ということ。
その余裕を使って、建物サイズを効果的に小さくするとともに「Dを元の寸法に戻した」だけのこと。
ゾーニングが出来てさえいれば、このような対処法がプラン変更することなく発動できるのです。
・・ランクⅢだった。
お疲れ様でした、まとめに入ります。
一級建築士製図ブログ:採光と採光補正係数、セットバックのまとめ
セットバックが緩和されるもの、されないもの
- 公園・広場
- 川・水面・線路
- 歩行者専用道路
- 敷地内の並木通り
- 個人が所有する空地
- 駐車場、隣りの庭や池
バルコニーには要注意!
セットバックの取り方の違い
- インナーバルコニーにする場合は、柱の出から「D」を取る。
- 跳ね出しする場合は、ヘリ空きを2m余分に取ってバルコニーの先端から「D」を確保する。
- どちらの構想でバルコニーを計画するかは、スパンの割り付けによって決まって来る。
採光に関わる要素
- 建物の高さ
- スパンの寸法
- 採光居室の床面積
この3つにより、建物の「後退距離」が決まる。
採光早見表
床面積×1/10 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数±0m | 階数±0m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-2m | 階数-1m |
床面積×1/7 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数+1m | 階数+1m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-1m | 階数-1m |
床面積×1/5 | ||
---|---|---|
住居系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数+1m | 階数+1m |
商業系地域 | 7mスパン | 6mスパン |
セットバック(m) | 階数-1m | 階数-1m |
- 用途地域と階数をチェック、採光居室の床面積からスパン寸法を想定する。
- スパン割りに応じて「階数」に「採光早見表」に記載してある「数値」を加える。
- 住居系地域では「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」→ 早見表に「1m」を加える。
床面積×1/5の用途のケース
- 住居系地域では「4階建て以上かつ床面積80㎡以上」→ 早見表に「1m」を加える。
- 住居系地域では「5階建て以上かつ床面積80㎡以上」→ 早見表に「2m」を加える。
セットバック距離を最短で導く計算方法
- 採光補正係数の計算式を「D」の式に置き換える。
- 建物の階数から、必要なセットバックの距離を算出する。
- スパン割りが決まった段階で、採光の適合性を再チェックする。
採光の計算式
$$①採光関係比率=\frac{ D }{ H }$$
$$②採光補正係数=①*6-1.4$$
$$③採光上有効な開口面積=窓の面積S*②$$
$$④採光上有効な開口面積>床面積*\frac{ 1 }{ 10 }$$
$$⑤採光上有効な開口面積*\underline{10}>床面積$$
カチカチカチカチカチ!
採光補正係数を操作してランクⅣを回避する7つの方法
- ゾーニングで回避する。
- スパンを圧縮して回避する。
- バルコニーを縮めて回避する。
- 窓の面積を大きくして回避する。
- 居室の床面積を限界まで削って回避する。
- 各フロアの階高を下げて最後の抵抗を見せる。
- 最上階はトップライトを付けて採光を確保する。
お伝えしたこと
- 採光の基本知識
- 採光補正係数の計算方法
- ランクⅣを回避する7つの方法
この製図ブログでは、法的採光について3部構成でお伝えしてきました。
ひと言に「採光」といっても、非常に奥の深い感性が求められることが分かりますよね?
明るさが身に染みたね。
一級建築士製図試験において、最も重要視されるのは法規の理解です。
採光でピンチに陥ったときは、「採光補正係数を操作してランクⅣを回避する7つの方法」を思い出し、合格への切符をつかみ取る手掛かりにしていただけると幸いです。
製図ブログについて
当ブログは、昨年の試験において悔しい思いをされた「角番生、角番からの復活の方」のモチベーションアップのため、プラスになる情報を発信していきます。
知識をアウトプット!
コメント